エフ・スタールの山陽行脚 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信

 エフ・スタール:山陽行脚・附東海道行脚(大6)金尾文淵堂

 

昨晩読んだ(書出しの)感じでは〝青い眼の膝栗毛〟というところでしょうか。ユーモアたっぷりで、時おり夏目漱石「坊ちゃん」を思い浮かべたりします。古い和歌なども引用されたり、あまりの日本通に驚かされるのですが、ちょっと気になったのは、この本ってスタールによって日本語で書かれたのかな? それとも誰かが翻訳しているのかしら。あまりに(日本人でもなかなかかけないような)こなれた文章で、どうなのだろう?

 

「山陽行脚」は京都を出発して大阪〜尼崎に入るあたりまで読んだのだが、随身として東京朝日新聞のI(アイ)さんから大阪では大阪朝日新聞のN君に引継がれて、新聞社本社に表敬訪問時のことなども書かれているから、この企画は朝日新聞の丸抱えだったのだろう。当時、朝日新聞に席をおいていた水島爾保布や岡本一平がスタール本に挿絵を描いたのは適役もあったけど、そうした経緯なのだろう。

 

 エフ・スタール:山陽行脚・附東海道行脚 見開き

 エフ・スタール:山陽行脚・附東海道行脚 口絵

 

「山陽行脚」装幀は中澤弘光、一色刷挿絵に岡本一平と水島爾保布。木版口絵には播恒春、永井瓢齋、野田九浦、水島爾保布、赤松麟作、他復刻が4点。玻璃版(写真)で5点挿入されている。出版元「金尾文淵堂」金尾種次郎は良本に命をかけ(お金もかけ)折々採算を無視したために倒産の憂き目をみている。古書店でみかけたらぜひ手にとって見て欲しい。明治末から大正(与謝野晶子本など)にかけての造本には溜息がでます。