野崎六助の捕物帖の百年 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
捕物帳の100年
 野崎六助:捕物帖の百年―歴史の光と影(2010)彩流社

連休は書架整理のつもりが本棚から引き出しては読む一方でかえって散らかってしまった。さて、最近の読書から気になったものを幾冊か。捕物帳を概観しようとすると、縄田一男「捕物帳の系譜(1995)新潮社」を思い浮かべるが、メインストリームを語るばかりで〝その筋(捕物帳オタク)〟には物足りないところだろうが、野崎六助「捕物帖の百年」はさすがにもう一歩二歩と踏み込んでいて読み応えがする。

当本の手引きで最近の捕物帳から東郷隆「とげ抜き万吉捕物控/異国の狐(2003年)光文社 」を読んでみたが、江戸末の風俗や言語(隠語)などたくみに使って玄人筋を楽しませるものになっている。シリーズ第二作「のっぺらぼう」になると、捕物帳の生みの親岡本綺堂「半七捕物帳」の構成を踏まえて楽しませてくれる。その分、ミステリ臭は薄く好みの別れるところだろう。野崎は坂口安吾「安吾捕物帖」を高く評価しているところなど(を含め、内容については)好感度が高い。

右門02
右門01
 嵐寛寿郎の右門捕物帳

以前紹介した珍本・栗島狭衣の「右門捕物秘帖」を読んだ余波で、ご本家・佐々木味津三の「右門捕物帖」を電子本で読み返している。佐々木は多くの扶養家族を養うために純文学から大衆小説に転じたが、この作品は書き継いでいくうちに愛着がわいてきたようで、時おり作者の顔が透けて見えたりするから面白い。同じ作者の「旗本退屈男」の方は、愛着が湧いてくる前に完結したようで、なんだかテキパキと片付けている。

人形左七
 若山富三郎の人形左七捕物帳

「捕物帖の百年」によると、横溝正史の「人形佐七捕物帳」を過小に評価していたかもしれない。大好きな今村恒美・中一弥の装幀挿画による金鈴社版「新編人形佐七捕物文庫」を2冊(全10巻)持っているのだが残りも読んでみたい。ただ金鈴社版は最近ネットでも見かけない。