島田一男「開化探偵帖」の緒形拳 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
開化探偵帖01
 島田一男:開化探偵帖(1970)桃源社

時は明治7年の9月の末。この年1月にようやく東京警視庁が創設され警官の制服も決まる。創立当初は巡査3,000人だったが直に増員されて5,000人を超える。巡査は全員屯所内で合宿、非番勤務に関わらず制服着用、およそ巡査は謹厳をもって身を処し人民の範たらざるべからず。さて、警官の多くは当然ながら薩長出身者がしめたが、舞台となる伝法院(浅草)屯所探索方の新宮寺京介は代々の浪人者、同僚には元南町奉行所同心に敗戦会津藩の出身者もいる。

いまだ江戸とも東京とも定まらず、ざんぎり頭にちょんまげ、洋服着物、下駄草履に洋靴が混在するごった煮の世相を舞台とするが、なかなか考証に大変だったようで展開もけっこう混乱している。戦後すぐに書かれた明治探偵もの村上元三「加田三七・捕物そば屋」や坂口安吾「安吾捕物帖」、やがて考証をふまえた山田風太郎の「明治もの」に光瀬龍「明治残侠探偵帖」そしてNHKでドラマ化された島田一男の「開化探偵帖」を忘れてはならない。

この桃源社版はわりと見かけないゆえ手に入れるに手間取った。作品自体は〝可もなく〟といったところなのだが、明治資料が少ないころで労作ではあったようだ。装幀は山藤章二、本文中に東啓三郎の挿絵が数葉入っている。

開化探偵帖02
開化探偵帖03
 グラフNHK:特集開化探偵帖(1969.03)

NHK「金曜時代劇(1968年11月1日~1969年10月10日)」では珍しい明治もの。詳しくはWikにゆずるが、原作は短編4作ながらテレビ放映は1年47話、脚本には島田一男自身も参加してのオリジナルな展開のようだ。原作では京介と浅草芸者の小梅(香川京子)といい仲なのだが、テレビではちょっと引かせて質屋の娘お金(鮎川いづみ)が熱いラブコールを送る。この作品、少年時に見ているはずなのだが(残念なことに)記憶に(残ってい)ない。