Craimes'N'Gals in the U.S.A | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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 Craimes'N'Gals in the U.S.A A Pictorial History, 1930s-1960s
 (1985)Italy
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 ミッキー・スピレインのシリーズ(1976)ハヤカワ文庫
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 チャンドラー短編集(1963)創元推理文庫

今回の粛正(古本整理)に、またしてもしぶとく生き残った文庫シリーズ。スピレインは生頼範義、チャンドラーは白井宣之の装幀画、いずれもパルプマガジン風のイカしたタッチだ。大版の洋書「Craimes'N'Gals」は戦前のアメリカで読まれた(セックスと暴力に満ちた)30~60年代のB級クライム・ノベル(犯罪小説)の表紙絵を集めたもので、生頼範義にしろ白井宣之にしろ、もちろんこれらの作品群をふまえて描いている。

アメリカが生んだオリジナルともいえるジャズや探偵小説(ハメット→チャンドラー→ロス・マクドナルド)の猥雑にして生硬・粗暴、かつ官能に満ちた世界をイラストで見事に表現している。もうすっかり過去の作家になってしまったミッキー・スピレインの私立探偵マイク・ハマーのシリーズは戦後60年代頃まで、世界で最も読まれた作家だった。チャンドラーは今なお村上春樹新訳が出版されるほどなのに、比較するとその凋落ぶりは激しい。しかし、そのスピレイン作品からは濃厚な時代感が漂う。

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 チャンドラー短編集(1963)創元推理文庫 白井宣之表紙絵

ハード・ボイルドの創始者・ダシール・ハメットのコンチネンタル・オプ(名無しの探偵)シリーズは日本に輸入されて黒澤明「椿三十郎」に翻案されたが、やがてビル・プロンジーニによって喫煙がやめられず、たえず肺がんに怯える名無しの探偵シリーズとして再生、こちらは軟派なところからソフト・ボイルドの称号?を拝した。そして、こちらの名無し探偵の唯一の趣味が「パルプ・パガジン」の蒐集で、書店から送られてくる古書目録の精査は怠らない。

男たちは猥雑と官能に生きる。そんな時代があったが、現在は清潔な男しか生き残れない。女性が選択し男たちはそれに応える。今一度、男くさい時代がやってくるだろうかね。狼は背中(せな)にギターを負ってさすらうのだぜ。