太田正雄・木下杢太郎「百花譜 百選」 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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 太田正雄(木下杢太郎):百花譜 百選(1983)岩波書店

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 ちどめぐさ(昭和18年7月23日)

前から気になっていた木下杢太郎「百花譜 百選」がずいぶん安価になっていたので“つい買い”したものだが、送られてきたのはあまりに大型重量本でのけぞった。バブル時代のなせる業か? いまどきは大型本というだけで敬遠される。杢太郎最晩年、昭和18年3月10日~昭和20年7月27日まで(実に)全872枚の植物写生図が残された。著者専用の枠付きの書簡箋に鉛筆で下書きをし、色鉛筆と水彩で彩色が施されている。余白には日々の備忘が書かれることがあり

最後に描かれた山百合の絵の余白には「胃腸の痙攣疼痛なほ去らず、家居臥療…運勢たどたどし」などとある。たどたどしい運勢は自身のことだったか、敗戦色濃い戦況と重ねてのことだったか。この最後の山百合を描いた3週間後に敗戦を迎え、その2ヶ月後の10月15日に亡くなった。どんな思いで(身の回りの草木の)植物図を描いたものだろうか? 最近、詩人木下杢太郎というよりも装幀家太田正雄に出会うことたびたびで、この際と思って手に入れたのですが、やはり大きすぎる。