小島政二郎「小説 葛飾北斎」と高野三三男 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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小島政二郎:小説 葛飾北斎(S46)光風社書店

ぎょうせい版「世界の伝記」全集の一冊、桂木寛子「葛飾北斎」は前に紹介したが、こちらは小島政二郎による「小説」で写楽との芸術問答が主題になっている。小島の浮世絵感を敷衍して見事だが、さすがに切り口は古くさい。ただ、この時代の文士は女遊びに不足がないから、北斎写楽にからむ女たちの描写が面白い。写楽に「優しい女はバカだし、利口な女は優しくない」などといわせているが、どう? いまさらお勧めするほどの作品ではないが、小島とは付き合いが古いので未読本はつい買い込んでしまう。

小島には病弱なひとり娘がいて、嫁にいかぬかわりに母亡き後の父の面倒は私が見るわと、二人で仲良く暮らしていたが、娘のほうが先に鬼籍に入ったものだった。当本の装幀に小島美籠の名前があるから、その女性であるのだろう。小島の晩年は寂しいものになった。さて、黒に近い鉄紺の函、臙脂色の布表装に小島自身の書が入ったシンプルな意匠である。

$.-高野三三男
高野三三男:雑誌スタイル原画

ヤフオクに高野三三男の油絵による雑誌「スタイル」表紙絵の原画がアップされていた。安価ならと思っているうちに、あっという間に10万ほどになってしまった。