柳田泉「幸田露伴」と小穴隆一の挿絵 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
みずすまし亭通信-小穴隆一
坪内譲治肖像:小穴隆一画

柳田泉「幸田露伴(中央公論社・昭17)」が届いた。函に補修痕があるものの極安価の落札本です。割と珍しい本なのでうれしい。柳田泉は露伴など多くの文学者の生前を知る明治文学研究の草分け、よって彼の著作は第一級の資料です。岩波文庫に「座談会明治・大正文学史」全6巻が素晴らしく、一読すると明治文学史の骨格が見えてきます。しかも、生身なエピソードがふんだんで飽きることがありません。巻末解説の関川夏央も見逃せません。

露伴生前に書かれた作品なので多少遠慮気味ですが出自から丹念に書かれ、引用にはいちいち出典が伏される綿密さです。柳田泉といえば「北村透谷」研究が有名で蒐集家としても知られましたが、太平洋戦争末期の空襲で、約1万5千冊といわれる蔵書・資料を焼失したそうです。戦後の収集本は没後早稲田大学図書館に寄贈されました。さて掲載写真は、芥川龍之介の装幀を多く手がけた小穴隆一の挿絵原画で、童話作家「坪内譲治」の肖像です。天地一寸などと書いてありますので、雑誌の片隅などに使われた小さなカットのようです。