ジョン・ダニング「愛書家の死」 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
$みずすまし亭通信-愛書家の死
ジョン・ダニング:愛書家の死(2006)

元刑事で古書店を経営するクリフォード・ジェーンウェイが主人公、いわゆる古書探偵クリフ・シリーズの最新刊第5作「愛書家の死」30年ほど前、40歳ほどで不審死した美人愛書家がのこした児童本コレクションから、数冊抜き取られているのが判って古書探偵クリフが乗り出すが、やがて自身も襲われ新たな殺人に巻き込まれていく。古書のうんちくも楽しい人気シリーズですが、今回はアイダホ州の地方競馬が舞台になっていて、その風俗習慣がわりあい克明に描かれる。

もちろんわが国にも「古書街を歩く」の作者紀田順一郎に「本の探偵―何でも見つけます」という広告を掲げる神田の古書店「書肆・蔵書一代」主人須藤康平のシリーズがある。前ブログではダニングの前作に辛い点数をつけているが、本作も(解決篇は今夜の楽しみなのですが)低空飛行か。古書知識の多彩さ深さが問われる特異な分野だけに頑張っていただきたい。なお、ダニング自身しばらく古書店を経営していたことがある。

さて、最近の古本屋さんは来店客よりもネット売りが主というのは仕方がないにしても、店内の展示本の入れ換えがおざなりで、よって巡回頻度が減じることになる。まことに残念。松井計「ホームレス作家」のように、私のような自営者は小さなつまずきでも、いきなりホームレスになる危険を秘めている。かような事態に至らば「背取り」といって、安い稀覯本を見つけては他古書店に高く売り、その利ざやで生計をたてるといった老後が来るやも知れぬから、古書店にはまだまだ頑張っていただかないと、まことに困ることになる。