西條八十「女妖記」 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
みずすまし亭通信-女妖記
カバー絵:山本タカト:おまえに接吻するよ、ヨカナーン

西條八十「女妖記」虚言癖窃盗癖を持つ若い妾を囲った西條八十は困りつつも、いつしか彼女よりも嘘を愛するようになる「桔梗の話」など、どこまでが事実でどこから妄想の産物なのか、妖しい女たちが次々でてきて楽しい。さまざまな女性遍歴のたまものみたいな作品なので、(私のような)朴念仁には決して書けません。中公文庫版の高橋洋一のあとがきに、詩人→歌謡作家へ転身する経緯が載っている。詩集「砂金」でスタートした西條八十は2年間のパリ留学を昭和元年に終えると早大仏文科助教授に赴任する。

当時は作詞家が少なかったこともあって、中山晋平と組んで歌謡・民謡などに手を染めるのはその2年後、売文の沙汰とさすがに非難のほうが多かった。親友の堀口大學が「民衆には民衆の歌が必要なのだ。どうせ誰かが作らなければならないのなら(日本のベエランデエたる君が)作るのが、一番民衆にとって幸福なわけだものね(八十への手紙)」と擁護した。ベエランデエはパリ生れの大衆風刺歌謡作家。この「女妖記」は昭和33年9月から翌11月まで中央公論に書きついだもので、心酔していた永井荷風の影響が感じられる。ほんとに摩訶不思議な情事の回想でありまする。

 われ抱く流木の墓涯しなき旅人にからむ蒼ぐろき蓬

流木(ながれぎ)の蒼ぐろき蓬(おどろ)。西條八十の詩「我娘と眠る」によるダイジェスト短歌。


Korngold Violin Concerto

ハリウッドの映画音楽に多大の影響を与えたコルンゴルドのヴァイオリン協奏曲。久しぶりに聴いてました。美しいヒラリー・ハーンによるしなやかな演奏です。You Tubeにギル・シャハムの演奏があるといいのですが、お好きな人は聴いてみてください。