小出楢重随筆集と入浴剤 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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静岡に向かう途中、運転手が疲れたので饅頭が食べたいと「道の駅」によったついでに、ちょっと地場ものを物色した。「豆腐の味噌漬け」がチーズに似ておいしいというので、買ったら「湯の花」温泉の素を2袋くれた。寒い夜は風呂に限ると狭い浴槽を人口温泉に変えて楽しんだ。そういえば、油彩画家の小出楢重は風呂は好きだが、いちいち入るに面倒で困るなどと随筆集に書いている。確かに銭湯全盛の時代、内湯がない家など普通だったから面倒といえば面倒だったのだろう。

爪が黒くなって手の甲が垢染みてくると、しぶしぶ銭湯にいったとある。フランスは南仏カーニュに留学したが、村に銭湯がないので半月に一回ほど、乗合自動車で20分もかけてニースの湯屋まででかけた。カーニュでは一生風呂を知らぬものがいたそうで、宿の女中もいまだ風呂の味は知らぬそうだ。などとあるから、毎日律儀に風呂に入ることもないのかも知れない。小出楢重の大阪人らしいデロリとした絵は若い頃から好きだが、随筆も負けずに好む。

 白骨の白く濁るる湯の花をわが家に咲かす啓蟄寒ぶし

 啓蟄に荒るる雪みて白骨の湯の花咲かす我が丈の桶

白骨温泉の白濁が消えて人工着色料を入れたとか入れないとかといったニュースがありましたろうか? いざという時のために天然湯の花を大量に蓄えておきましょう。寒の戻りは入浴剤であたたまり。