ラヴゼイ「処刑人の秘めごと」と石版16色刷印刷 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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大正7年「新演藝」に掲載された歌川国宗(2代目)の「七代目 市川團十郎の松王丸」の版画をもとにした印刷口絵ですが、実に石版による16色刷りです。墨版以外は職人さんがレタッチで仕上げたのでしょうが、幾日費やしたのでしょうかね。下は昭和51年発刊の中央公論社による「高橋誠一郎コレクション」から奥村利信の印刷ものですが、押し目まで入った見事なもので、網点も見当たらず本物に見えます。まさしく職人さんの仕事です。

奥村利信は江戸中期の浮世絵師、奥村政信の門弟で“漆絵”を多く描いたことで知られています。カラー時代に入り始めの浮世絵の色彩は、おずおずというか繊細というか渋めな色彩が気に入っています。鈴木春信、磯田湖龍斎など程度の良い復刻ものでも欲しいところです。

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久しぶりの英ミステリ、ピーター・ラヴゼイのダイヤモンド警視シリーズ最新刊「処刑人の秘めごと The Secret Hangman(2007年)」を読みました。パソコンに疎くケータイを持たぬアナクロな中年主人公は、若い部下をこき使いながら、一見自殺に見える連続殺人犯を追いつめます。ラヴゼイも70歳を超えて第一線で頑張っているようですが、ちょっと途中で犯人が知れてしまっています。やはり1980年代に発表した「偽のデュー警部」などヴィクトリア朝時代を舞台にした歴史ミステリが一押しでしょうか。

何を読んでもハズレのない中堅作家で、ついTV「浅見光彦シリーズ」を見てしまって後悔するくらいなら、ゆっくりラヴゼイ本を読んでいた方が、なんぼかマシなようです。英女流ミステリではルース・レンデルは外せない作家ですが、実はほとんど読まずに残してあります。先日も、図書館本の借り出しをぐっとこらえて書架に返してきました。定年後の楽しみにとっておこうか、それともそろそろ読み始めようか。一ヶ月くらい入院といった仕儀に至れば、躊躇なく読破とまいるのですがね。