新潮社版の吉川英治「檜山兄弟」 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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昭和7年刊、新潮社版の吉川英治「檜山(ひのきやま)兄弟」上巻、挿絵装幀の堂本印象は西陣織の図案描きの仕事をしていたが、日本画家を志して京都市立絵画専門学校(現京都市立芸術大学)に入学、大正8年に帝展初入選しています。今では日本画のビッグネームですが、この時期は随分挿絵を描いています。「檜山兄弟」は昭和6年に大阪毎日新聞に連載した維新もので、豪商が残した莫大な遺産をめぐって右往左往、さまざまな人物が交錯します。吉川節が効いた力強い文体でぐいぐい読ませてくれます。

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表紙・扉は木版摺り、挿絵も4~5ページごとに挿入、函も銀泥刷りを加えた豪華本、当時の吉川英治の人気のほどが知れます。割と稀稿本のようで上下揃い本の古書価はかなりですが、残念なことに手元には上巻しかありません。下巻は図書館の全集本を読むしかないですね。戦中戦後以降はこうした手間のかかった造本はなくなりますので、この時代の美本に多くの蒐集家が注目するのは当然です。ただ、コレクターズ・アイテムは手袋してということになりますので、適当に傷んでいた方が私には気楽でよろしいかと。