穂村弘「もしもし運命の人ですか」に岡崎裕美子 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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激しい恋愛のなかで、私たちは生の実感を得る。男性のタイプとして「いいひと」が恋愛対象として女性に人気がないのは、日常に限りなく近い恋には恋の醍醐味がない。そこで危険な男、わからない男、厄介な男との恋愛の方が、はるかに生の実感が感じられ、それは死の匂いがするほどに強くなる。やっかいなものである。かといって、危険な恋ばかりでは身体がもたないしそろそろ身を固める時期でもある。今から思えば、性格は2番目の男、ルックスは4番目で収入は6番目かな。

総合点では3番目だから彼よりいいひとが現れたら結婚したい。そんなにうまくいくわけがない。洋服や靴、デジタル製品を取っ替え引っ替えするようにはいかない。比較交換地獄のなかでじりじりと時間だけがすぎていく。「いいひと」はその恋愛体質の女性たちの、恋愛に倦んだ間隙をつくより手がなさそうだが、いわゆる植物系なので解散時期を逃す麻生太郎君状態になる。穂村弘「もしもし運命の人ですか」にそうした様々な煩もんが羅列される。

 年下も外国人も知らないでこのまま朽ちていくのか、からだ

岡崎裕美子の短歌を一首、取り急ぎ。