


初見の作家ブライアン・フリーマン「ストリップ」長野きよみ訳を読んでいる。「ザ・ストリップ」というのはカジノのことらしいが、原題は「striped」で縞(しま)とか筋のあるといった形容詞になっている。カジノにかけたタイトルらしいが、今のところ意味不明です。金持ちのボンボンがラスヴェガスの路上で娼婦と行為中射殺され、捜査を始めたストライド刑事は、同じ頃別の町で轢き殺された少年の事件とのかすかな接点が気になりはじめる。
探偵刑事物は日本のいわゆる時代劇です。アメリカではキリスト教的倫理観を基盤にした「正義」がなされることが、彼の国民のカタルシス(浄化)につながります。その探偵刑事たちも現代を共有させられるためにさまざまな「痛み」を抱えさせられます。ストライド刑事は、やはり刑事である恋人と暮らすために質実素朴なミネソタからラスヴェガスに転勤、相棒には悪意を持って性転換したアマンダが選ばれる。ア・マン・ダ(男よ)と改名した屈折した相棒に、クール・ビューティとも言われる恋人セリーナは子どもの頃、ジャンキーな母の麻薬の代金代わりに身体を差し出し、現在でもそのトラウマに苛まれている。

皆それぞれの十字架を負いながら、自身の日常と格闘しています。彼ら彼女の行き着く先と私たち自身が歩く方角は同じようなのですが、作中の主人公たちの枷は重いようです。さて、上の写真は日本画・挿絵画家の鴨下晃湖による絹本色紙で、中国に画題をとっているようですが出典は不明です。庭園の欄干から遠望しているのか瞑想しているのか? 手には白い扇状のものを持ち、頭上の鳥かごからは愛らしい鳴き声が聞こえます。静かなのんびりした画題で事務所にぴったりです。のんびりボウっとできないのが現代人の病なのですね。