別役実「虫づくし」と御免博打場 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
洞爺湖サミットが始まり「2050年に世界の温室効果ガス半減」とする長期目標を主唱する福田日本だが、決着は玉虫色になりそうだ。いっそのこと万葉がなで和歌の形式で議決すればよろしい。主語がなければ各々なんとでも解釈できるし、日本文化の底力を世界に知らしめることになろう。原油価格高騰についてはオイル・ファンドによる先物投資のせいだが、もともと八代将軍吉宗がおこなった米の先物取引が世界で一番早かった。

帳合米取引といって3ヶ月先の米相場を予測して買いの予約をするのだ。一般には御免(ごめん)博打場といっていたから、当時も先物買いは博打の感覚だったのだろう。いわば日本は先物先進国だが、世界中が国も含めて博打に熱中しているのだからまことに救い難い。子どもに清く正しく、汚職や賄(まいない)はいけないといっても、親や国が賭博に眼が眩んでいるのだから、皆の性根も曲がろうというものである。子どもには上手な賭博方法を教えたらよろしい。どこぞで先生に教育委員会を巻き込んで贈賄を楽しんでいるようだが、あんなもの端から摘発したら清浄な市民はいかほど残るか?

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やれやれ、古書の世界に戻ろう。最近マイブームなのは別役実“づくし”シリーズで、昭和55年頃に発刊された「虫づくし」を皮切りに、上写真「けものづくし」「道具づくし」これはアマゾン古本に発注済み、以降二冊、計五冊上梓されている。ルナールに有名な「博物誌」があるが、あの本を長々と散文にすると別役本になる。ルナールのヘビは、確か

 ヘビ 長すぎる

こんなじゃなかったかしら。別役は日本人にしては珍しくヒューモアとかウィットとか感じさせる作家だ。正確には劇作家なのだろうが、言葉に対する感性が豊かで、これは舞台演劇でセリフを磨いたせいなのかもしれない。もちろん、同じことは井上ひさしにも言えることだけれども。「虫づくし」はあんまり売れなかったと「けものづくし」のあとがきに書いてあったが、その後もシリーズが続いたところを見るとそれなりに読者はついたのだろう。「道具づくし」の到着が待たれる。

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世が汚濁に満つれば、いやます古書の世界は泥池に輝く蓮の花、蓮葉に輝く朝露に見えることでありまする。私たちは汚濁は避けて通れず、賄はふところに、銭金の亡者となりて一生を終えるのであります。一日の終わりにはせめて本をひもとき、懺悔の心もて我が心内を顧みられんことを、老婆の心にて記さずにはおれませぬ。ちょっと美文かな?