明治22年発行「歌舞伎新報」14冊合綴と芳幾・国松の挿絵 | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
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明治22年に発行された「歌舞伎新報」14冊分の合綴で、 浮世絵の芳幾国松あたりが挿絵を担当している。数日おきに発行された薄い刷り物を綴じて和本にしてあります。挿絵は木版、文字は活版ですから別々に印刷したのでしょうね。新劇台本、久保田彦作「夏仕入双単衣地(なつしいれふたこのひとへじ)」では、御一新から20年も経つのに、相変わらずまげを切らない旧弊な店主と芸者に入れあげるボンボン息子、親を亡くし引取ってもらったこの店で丁稚から世話になった律儀な番頭、その番頭を好ましく思う隣りのお嬢さんは、本を読んで教養を身につけた開化な娘であります。もちろんお金持ち。

ボンボンの使い込みの身代わりに解雇される番頭半七は、苦労を探して歩く見本のような男のようです。さまざまな登場人物がそれぞれに絡み合ってもつれたあたりで、パタリと連載が途絶えております。昔はのんびりしていたようで、よく号には作者が避暑地で野グ◯を楽しんでいる報告文が掲載されていたりします。結末はどうなるのでしょうかねぇ。この合綴は千号を越えていますから相当年発行されて支持もされていたのでしょう。挿絵の彫りも緻密でなかなか気が入っています。

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着物姿におかしなパナマ帽をかぶって笑わせてくれますが、もちろん当時は真面目なトレンドだったのでしょうね。流行を追っていくら着飾っても100年経てば笑いの種であります。この新作劇、一つ部屋で開化女が律儀男に告白するのですが、濡れて色増す釣荵ぶ哀れ身を知るこうろぎの啼く音寂しや草の中… となかなか盛り上げてくれます。律儀男は身分も違い、今は職をなくしてボテフリ(担ぎ売り)状態ですから煮え切りませぬ。当時は相当際どいシーンなのでしょうが、今になればモタモタと感じるばかりです。

昨ブログ、明治末の長崎屋かく子は親の決めた相手に諾々と嫁いでいく時代です。自由恋愛など淫奔のそしりを受けてもいたしかたがない時代のトレンドは、今になれば思いっきり旧弊で笑いの種にしかなりませぬ。今に深刻ぶっても最後は笑いの種でございます。皆様、安心して楽しく元気にお暮らしください。未来は割合お気楽で、たいがいはチャラにしてくれそうな気分であります。さて、今日はこれからおそば屋さん中元バンフの撮影で、戻りは午後遅くになりそうです。明るく元気にこなしてまいりまする。