大倉燁子「踊る影絵」に「少女マンガパワー」展と「ボストン美術館浮世絵収蔵展」加えてお詫び | mizusumashi-tei みずすまし亭通信
影絵

女流作家大倉燁子の探偵小説「踊る影絵」昭和10年柳香書店刊の初版、函、帯付。装丁が松野一夫、巻末に江戸川乱歩他錚々たるメンバーによる推薦文があるのだそうです。コンディションが良い稀少本です。オークション落札価格が287,000 円でした。入札参加以前の話で価格が跳ね上がるのを日々呆然とながめておりました。確かにコレクターズ本ですがここまでとは… 手袋マスクをして一回読ませていただきたいものです。ちょっと昭和10年の紙の匂いも嗅がせてほしい。

昨日は新津美術館「少女マンガパワー/つよく・やさしく・うつくしく」展を観てきました。手塚治虫「リボンの騎士」には頬ずりしたくなりましたが、どうみても複製品なので踏みとどまりました。女の子なのに王子に扮装し単身、王国乗っ取りを企むジュラルミン大公やナイロン卿などの悪者と闘うのです。王子に扮装しても女の子というのが見え見えなのがミソで、小学生だった私はボーイッシュな女の子の躍動美、美しさに幻惑されるのでありました。はい、この作品で異性に目覚めました。笑え。

石森章太郎「龍神沼」原画は盗もうと思いましたね。展覧会は盛況でチャンスがありませんでした。私のバイブルでありました手塚治虫「マンガ大学」と並ぶ、石森の「マンガ家入門」で「龍神沼」の作画手法が石森自身によって語られます。「龍神沼」特装本は手元か実家にあるはずです。ちばてつや「123と45ロク」水野英子「ファイヤー!」も懐かしい。正直余り期待しないででかけたのですが、以上を見れただけで漫画家を夢見ていた少年時代に戻れました。うまいことに白髪頭の鼻ひげ中年男の内部の幼児性に気がついた人はおりませなんだ。

ちょっと複製品が多かったのが残念で、たとえそれが精巧でも展覧にあたい致しません。偽モンと知れた時に落ちたテンションはなかなか立て直しが利かないものであります。でも入場料金が安いので文句はここで停めておきますね。ここから新潟市美術館「ボストン美術館浮世絵収蔵展」に廻ったのですが、予想を越えた作品群に驚かされました。当展のチラシはというと歌舞伎絵「暫(しばら)く」の口元から“しばらく”と吹き出しのついたどうにも笑えぬ仕上がりに加え、チラシ掲載の図版が写楽の「石部倹吉」に北斎「赤富士」といったポピュラーな作品ばかりで、触手が伸びなかったのでありました。

が、初期鳥居派に鈴木春信・磯田湖龍斎の作品群、広重の版下絵(版画の原画スケッチ)まで並んでいます。春信の作品は輝くばかり、その春信の影響を脱した湖龍斎の作品を一晩部屋に飾ることができますれば、1月ほどの入牢(じゅろう)は覚悟いたしまする。欲しい。いただきたい。ということで、久しぶりに車で遠出をしたのですが、清貧を旨とする信条からナビなど搭載しておりませず、新津で迷うは浮世絵展では時間を忘れ(時計を持っておりませず)夕刻からのフルート・アンサンブルの全体練習に間に合わなかったのでした。まことに、お詫び申し上げます。です。