4月の初めのこの時期は、ジャージ姿をよく見かけます。

 まず、春休みなので、部活動なのか、ジャージを着た中高生を見かけます。少し前の2月までだったら、ウィンドブレーカーをその上に着ていたりするのですが、今はそれは脱いで、部や学校名をプリントしたジャージでいたりします。

 また、春休み中だからか、なんとなく、のんびりとした感じを受けます(別に大会前だと、殺気ばしっている、とい訳ではないのですが)。

 また、スーパーだとかコンビニだとかで、普段着としてジャージを着ている人たちをこの時期は、よく目にしますね。こちらは中高生と違って、ラインがなかったり、文字や絵柄がいっぱいプリントしていたりするのが特徴ですが。

 それに、もう少しすれば新学期。新入生たちは、真新しいジャージを着て、体育に臨むことになる訳です。新学期・最初の体育は、行進や隊形の練習など、あまり運動量の多くないものだったりします。

 どちらにしろ、春は夢見心地なジャージのに会う季節です。

 

 今日、トレーニング・ルームに行ったところ、女子高生が四人いました。正確にいえば、二人と二人の二組でしたが、どちらも同じ学校のようでした。

 四人のうち、三人は黒い長袖のトレーナーにジャージのパンツ、ジャージ上下は一人でした。とはいえ、正直に言うと、横でトレーニングをしていても、まったくときめきもなにも感じませんでした。長袖のトレーナーと言うのもありますが、それ以上に、彼女たち自体に、内面から醸し出される、まったく色気と言うか女らしさというものがなかった、というのが理由です。

 ビデオや小説、自分の過去の感じと違って、実際の中高生というものを目の当たりにすると、むしろ子供ぽさのほうがめだち、大人らしさ、若さというものは、むしろないんですね。状況によれば、そういうものを感じるかもしれませんが、実物とイメージは違うのです。

 今日いた彼女たちは別にブサイクというわけではないのですが、いたってふつう、ふつうすぎて何もないのです。

 あまりジロジロ見ていて不審者と思われても心外なので、ほどほどにして出て行きました。別に彼女たちは悪いわけではなく、僕が勝手に思ったことではありますが、自分の中だけでしまっておきます。

 3月に入ったとはいえ、寒い日が続きます。

 出勤途中、中学生の登校姿を目にすることがありますが、女子でセーラー服の首まわりから、学校ジャージを着ているのを見ることがあります。

 ブルマーはなくなり、学校ジャージもモデルチェンジしたものの、制服の下にジャージを着るという習慣は、まだまだ残っているし、やはり、中学生なんだな、と思いますね。

 体育の始まる前になると、セーラー服の上着を脱いで、ジャージになって出ていく、そんな姿を想像するだけで、嬉しくなりますね。

 

整備運動が終わると、奈津美が後を受け継いだ。

「では、今日の水泳の授業は終わります。前に倣え、きおつけ、礼―!」

 終わった。生徒たちは、シャワーに向かっていった。今度は聖子も一緒に浴びる。

「先生、いつの間に着替えてきたの」

「ジャージの下に着ていたのよ」

「それで、タオル持っていたのね―」

 シャワーから出て、タオルで体をふいている聖子に奈津美が近づいてきた。

「お疲れさま。最後の整備体操、キビキビしてよかったよ。さすが、元水泳部ね。そんなに泳げるのなら、ジャージなんか着てないで、最初から水着でくればいいのに」

「もしかして、私がいつもプールの時に、ジャージの下に水着を着ていたって知っていたの?」

 聖子はジャージを手に取りながら尋ねた。

「体全体のラインを見れば、下着を着ているのかそうでないのかは分かるものよ。ポケットがスイミング・キャップで膨らんでいるのも分かっていた。体育専門じゃないからって、遠慮することなんてないのに。こっちが見ていてもどかしかったわ。久しぶりのプールは、どお?」

「最高ね。泳いだ後の爽快感が、たまらないわ」

「でしょぉ。それなら、今度からは最初から水着で授業に臨んだら? それとも、水着になるのが恥ずかしいの? 体育教師の私から見ても、決して、鈍ってないわよ」

聖子はジャージの上着に腕を通し、ファスナーを上げていた。

「そういうのじゃないわ。これでも、元水泳部だし、水着になることには抵抗はないのよ。ただ、それ以上に、ジャージを着るのが好きなのよ。ジャージの下に水着を着ていると、体全体が引き締まったような感じがして、気持ちが不思議と昂ぶってくるのよ。ジャージだけど下には水着を着ていると思うと、たまらなくなるのね。だからこそ、そのジャージを脱いで水着一枚になって水の中に入った時、解き放たれた感じがして、それがたまらないのよ。魚になったような感じがするのよね。

 それよりも、奈津美のほうこそ、いつも水着のままでいるけど、どうなの?

わたしは、週に3回だけど、奈津美は毎日でしょ。ずっと水着でいたら、肌が痛むし、夏の日差しは、浴びているだけで体力を消耗するのよ。わたしが水着になったんだから、今度は、あなたがジャージを着る番よ」

 今日も聖子はジャージのファスナーを閉めると、タオルを手にして更衣室を出た。前をすでに着替えた奈津美が歩いているのが見えた。真っ白なニュータイプのジャージを着ている。あれから、奈津美も水着の上にジャージを着るようになってくれた。奈津美も気にいってくれ、そのまま水着にならずに授業を終えることもある。さあ、今日はどうしようか、暑いし、久しぶりに誘ってみるか、そう思いつつ、聖子は向かっていった。

聖子はタオルをシャワー横のベンチの上に置いた。それから、ジャージのズボンに手をかけると、一気に下におろした。たちまち、色の白い太股と、紺色の生地で覆われた股下が露わになった。脱いだズボンを丁寧に畳んでベンチに置くと、今度は上着の襟元に手をかけ、ファスナーを下まで一気に下ろした。オレンジ色のジャージを脱いでしまうと、聖子は競泳水着姿になっていた。

 聖子はシャワーの蛇口をひねった。透き通った水がほとばしる。聖子はその下に立った。顔に、首周りに、胸に、背中に、水しぶきがかかっていく。

「うぅっ、あぁっ…、きもちいい…」

聖子は小さく声を上げた。シャワーが今までのものをすべて洗い流してくれたような気がした。

シャワーから出るとタオルで顔などを軽く拭くと、脱いだジャージを持って出てきた。ジャージはベンチに置くと、プールサイドに立った。

ピーッ! 笛を吹いた。生徒たちは見上げた。そこには、オレンジ色のジャージを着ているはずの聖子が、水着になって立っているのだ。聖子の様子を見て、生徒たちは騒ぎだした。

「きゃあ、先生、いつのまにか水着に着替えているー!」

「ジャージの下に着ていたのねー」

「やっと、水着になったんだー」

 口々に騒ぐばかりで、プールから出ない生徒たちを、生徒は促した。

「はーい、プールから上がって整列して―」

 プールから出ても、生徒たちはまだ興奮が冷めやらないようだった。彼女たちにとっては、一気にプールが楽しくなってきたのだ。聖子にも、生徒の期待が感じられた。シンプルな水着の自分に、彼女たちの視線が一斉に注がれている。しかし、平静を装いながら、説明を続けた。

「今度は、最初にやった足の動きと合わせてやってみてください。いいわね」

聖子はプールの端まで行くと、そこで水に体を入れた。まず、足首、それから徐々に体を水面におろしていく。水は生温かい。聖子の胸の上まで水は届いた。

「では、始めてください」

 笛の合図とともに、生徒たちは勢いよく進んでいく。

「そう、そうよ。でも、もう少し、水を掻く時、脇を閉じないようにすることよ」

 ゴール地点に着いた松下に聖子は声をかけた。

 あるいは、プールの中心線まで行き、中野に、

「先生が腕を持ってあげるから、ちょっと足を動かして御覧」

 そのように、聖子は目についた生徒たちに次々に近づいて、指導していった。生徒たちも、そんな聖子の熱心さにこたえるかのように、聖子の指導を素直に聞いてくれる。

ピ―ッ。

 奈津美の笛だ。

「時間よ。基本コースの人たちも、発展コースの人たちも終わり―。プールから上がって、ここに集合!」

生徒たちが次々と上がっていく。もう、終わりの時間か。いつもよりも早い気がした。基本コースの生徒が全員、プールから上がったのを確かめてから、聖子もプールから出た。水から出ると、心地よい疲れが感じられた。

発展コースの生徒たちは、いつのまにか聖子が水着姿になっているのに今更ながら気がついたようだった。

「聖子先生、水着になっているー」

「せんせー、かっこいいー」

「本物の体育の先生みたいー」

生徒たちが口々に声を上げた。奈津美が言った。

「はーい、静かに。今日は、こうして合同で、レベル別で練習してみましたが、どうでしたか。どちらのコースの人も、次回は、もっと泳げるようになりましょう。では、整備運動をしましょう。聖子先生にしてもらいます。前に出てきてください」

 後ろにいた聖子は、ひっぱりだされるように前に立たされた。しかも、無地の紺色の競泳水着だけしか身につけていない。奈津美や生徒と同じ水着姿なのだが、なんだか、さらせれている気がした。でも、恥ずかしがってはいけない。堂々としなくてはいけない、と聖子は自分に言い聞かせた。

「体操の体型に広がってー。まずは、ジャンプー」

ピッピッピと笛を吹きながら、整備運動をしていく。