「1番、――、よろしくねがいしますっ!」

僕は、大きな声で挨拶をし、構えた。側転、前転、開脚前転…、最後に立ちあがり、両手を伸ばし、ポーズを決めた。今日の中で、そして、今までで一番良くできた、と思った。終わると、知子が拍手をしてくれた。

「はい、次は、中井知子さん」

先生が呼び、今度は知子がマットに立った。

「2番、中井知子、よろしく願いします」

凛とした声が体育館の天井までこだました。知子は少し助走をしてから腕を構え、大きく円を描くように側転から始めた。

 白色の体操服に濃紺のブルマの知子は、まさに妖精のようだった。くるくるとしなやかに回っていく。苦手にしていた倒立も、足をまっすぐに伸ばせていた。技と技の間のポーズも隙がなく、次の演技に移っていく…。僕は見とれていた。最後の演技が終わり、知子はポーズを決めた。僕は大きく拍手をした。僕のほうを見た知子は少し誇らしそうだった。

 演技が終わり、先生の前に僕たちは立った。先生演技を講評した。

「二人とも、今までで一番良くできていたわ。まず、-君は、腕がしっかりとたつようになりましたね…」

僕の演技への講評を一通り終えると、先生は知子のほうに向いて言った。

「知子さんは、本当に素晴らしかったです。知子さんも苦手だった倒立が、できるようになっていました。演技は、全て、完璧といっていいくらいです。でも、大きなミスが一つだけあります」

「……」

知子は不安そうに先生を見る。

「演技が終わった時、知子さんは、ブルマからパンツがはみ出ていたのを直していたわね。ほんの一瞬で、無意識にしたのだと思うけれども、あれはよくないわね」

恐らく先生は最初から、本番で知子がそうすることを心配して、ジャージを脱ぐようさせたのだろう。先生は、諭すように言った。

「競技をしている時は、服装に気にしてはいけないわ。最近は、あなたたちの中に、ブルマや短パンを恥ずかしがる子たちがいるということを、先生も聞いているわ。でも、今着ている半袖体操服に短パンやブルマが、あなたたちにとって本当にスポーツをする時の服装なのよ。真剣にスポーツをしている時は、むしろ美しく魅せてくれる、ということを覚えておいてね。

 それでは、最後に整備運動をします」

知子と僕は、足や腕を回したり、アキレス筋を伸ばすなどした。それがすむと、二人でマットを運び、体育館の倉庫に入れた。始まりは、マットを出す時も、準備運動も、制服にジャージだったが、終える時は、二人とも夏用の半袖体操服姿で、短パンやブルマのままだ。そのまま着替えずに最後の号令もした。

「はい、今日はこれで終わります」

「きをつけ。礼」

「ありがとうございましたー!」


 終わりのあいさつを終え、僕と知子はバッグをとりにベンチの前に行き、水筒をとって水分補給をした。

「それにしても、知子の最後の演技は、本当によかったよ。側転の時の足の上がり方なんて、完璧だったよ」

「-君が手伝ってくれたからよ。でも、わたし、本番は、もっといい演技にしたいなあ」

知子はベンチに座り、臙脂のジャージを畳みなおしながら言った。

「着替えないで、体操服のままで帰る?」

「まさか。オリンピックの選手だって、レオタードでは会場からは帰らないでしょ」

 知子は、後の部分は先生の口真似をしながら言った。練習の時は気に留めなかったが、やはり今は11月だ。僕も短パンのままだと寒くなってきた。ジャージのズボンをとって、足を通した。それから学ランに腕を通し、金ボタンを一つずつはめていった。

「わたしも着替えなくちゃ」

知子もジャージを履き始めた。久しぶりの濃紺のブルマは、再び臙脂のジャージに隠されてしまった。ジャージを整えると立ち上がり、セーラー服の上着を上からかぶり、両脇のファスナーを締め、襟元や首周りのフォックを止めた。白い体操服も、セーラー服の下に隠されてしまった。リボンを締め、帽子をかぶると、最初に体育館に入った時と同じ姿の知子になっていた。でも、ほんの十分くらい前までは、ブルマ姿で華麗な演技をしていた少女だったのだ。さっきの練習の時の興奮を思い出しているのか、知子はセーラー服の胸元辺りに手をかけ、少しの間、体育館をぼんやりと眺めていた。彼女のうなじからは、セーラー服の下の白い体操服の襟元を見えていた。

「そろそろ帰ろうか」

僕は知子に帰りを促した。僕と知子は、並んで校門を出た。

「帰りは、わたしのところに寄っていかない? ママが、-君も遊びに来たらいいのに、て言っていたのよ。ジュースを飲みながら、今日の反省会て、どう?」

「いいね、行くよ」

ジャージに制服でいる時間が、今日はもう少し長くなりそうだ。先生が言っていた、「正式の戦闘服」になる時間は、意外と短い。だけど、だからこそ、充実するのだと思う。ブルマの知子も美しいけれど、セーラー服に臙脂のジャージの知子もかわいらしいな、と僕は思いながら、一緒に歩いていった。



                             完







前転と後転の練習を20回くらいすると、先生から次の指示が出た。

「次は側転の練習をします」

 同じように、順番に、側転をしていった。知子は白い体操服から伸びた両腕をしっかりと伸ばしてマットの前に立ち、勢いよく下ろす。そうして2回連続で回転する。側転の時、臙脂色のジャージに包まれた足が、Y字を描いて大きく開く。先生は時々、僕や知子に指示を出す。

「手をつける時に、マットをしっかり見て」

「足は大きく、しっかりと伸ばして」

側転をある程度続けると、先生は、前に並ぶように指示を出した。

「今度は各自、マットを一枚ずつ使って、特に苦手に思うものを集中して練習してください」

 僕と知子は並べていたマットを離して、それぞれ別に練習を始めた。僕は、開脚側転の練習をしていった。向こうでは、知子が倒立前転と側転の練習をしていた。逆立ちして一瞬、止めるのだが、どうしてもぐらついてしまう。

「―君、ちょっと来て手伝って」

 知子の足を支えていた先生が僕を呼んだ。

「このゴム紐の端を持って。知子さん、このゴム紐を超えるようにして側転をしてみて」

僕と先生は、ゴムの両端を持って、かがんだ。知子がゴム紐の端に向かって側転をした。足が思いっきり上がり、うまくいきそうに思ったが、ぐらついて臙脂色の足が僕のほうに向かった。

知子は起き上がりながら、心配そうに言った。倒れた時、ジャージのズボンが少しめくれて、その下に履いている濃紺のブルマの腰回りの部分が見えた。知子は立ちあがり、ズボンを直しながら僕のほうを心配そうに言った。

「ご、ごめーん。大丈夫―?」

「いや、大丈夫だよ。そんなことよりも、知子は体操のことだけを考えたらいいよ」

「ありがとう、―君」

「さ、もう一度よ、知子さん」

先生がゴム紐を持ち直しながら言った。

知子は側転をその後も、続けた。10回くらいすると、大分、うまくなり、ゴム紐を超えて回れるようになった。

「ごくろうさま、―君。自分の練習を続けて」

先生はゴム紐をしまいながら、僕に言った。僕は、もう少し、知子の練習に付き合ってもよかったのだが、マットに戻り、自分の練習を続けた。ある程度、すると、また、先生から指示が出た。

「はい、練習をやめて。マットをもとのようにくっつけて」

僕は知子とマットを引っ張り上げ、最初のように二つ横に並べた。

「二人とも、大分、できるようになりましたね。本番が先生も楽しみです。

今度は、本番でするとおりに連続技の演技をしてください。二人とも、ジャージは脱いできてください」

「…ジャージは、脱ぐのですか?」

知子が少し戸惑ったように言った、

「そうよ。今日の仕上げとして、本番と同じ形でするのですよ。オリンピックの体操の選手だって、競技の時はジャージなんて履かないで、レオタードで演技しているでしょ。さあ、早く準備して」

先生は知子の戸惑いにはお構いなく、当たり前のように言った。

 知子と僕は上着をかけているベンチのほうに行った。僕は、青いジャージを下ろし、白色の短パンになった。寒いけれど、足のあたりが動かしやすくなり、気持ちが奮い立った。なんだか、今日、一番、いい演技ができそうな気になった。

知子も履いていた臙脂色のジャージを下ろした。そうすると、中から濃紺のブルマのヒップに、真っ白なしなやかな太ももが露わになった。知子のブルマ姿を見たのは、運動会以来だった。その時よりもどこか大人っぽく見えた。知子は、ジャージを畳み、セーラー服の上に乗せ、ブルマを整えた。

 まずは、倉庫からマットを取り出す。先生と3人で、倉庫に入った。倉庫の中は埃っぽく汗臭い匂いがするが、この匂い、決して嫌いではない。僕たちは、奥の積んであるマットのところに行き、それぞれ端を持って、運び上げる。そして、体育館の中央まで持っていく。この作業を3回繰り返す。これで、なかなかいい運動になる。

マットを並べると、ウォーミング・アップに入る。

「はい、まずは、ランニング、5周」

体育館を5周走る。この時は、先生も一緒に走る。3週までは楽だが、4週目から、少しきつくなる。もう、はく息が白くなっている。

ランニングが終わると、次は準備体操だ。

「1・2・3・4、5・6・7・8…」

先生の笛とともに、僕と智子は腕や肩を大きく回したりする。各自で、腕や背中を回す運動をした後は、次は二人ペアでの体操だ。知子と手を組み、互いに体を伸ばしたり、背中から彼女を持ち上げたりする。知子の引き締まったヒップが、僕の背中で揺れる。

「次はブリッジ」

僕と知子は、一旦、床にあおむけで寝そべって、それから腕を上げて腹筋をそらした。そのままの姿勢をしばらく保つ。学ランの裾が少しめくれたままになった。ちらっと知子のほうを見ると、セーラー服の上着と臙脂のジャージのズボンの合間から、下に着ている白色の体操服が見えた。

「はい、じゃあ、次は腕立て伏せ20回」

 今度は反対に、床に腹ばいになる。顎が床につくと、ひんやりとして気持ちいい。先生のカウントとともに、腕を上げたり下げたりする。横にいるのが女子なので、負けたくないという気持ちが働く。知子のほうも、女子だからと見くびられたくない、という気持ちが働き、しっかりと腕を伸ばそうとしているのが、分かる。いつもは、お互い、仲が良い二人なのだが、スポーツになると、別だ。こいつには負けたくない、というライバル心が働く。これが男同士だったり、もっと人数が多いと、そうでもないのだろうが、男女一人ずつというのが、かえって気持ちが奮い立つのだ。

「…19-、20-。はい、やめ。立って」

そろそろ限界かな、と思ったところで、先生の合図が入った。先生の言葉で僕たちは、腕立て伏せをやめ、立ち上がる。一通り準備運動が終わると、体も大分、暖まってきた。知子もセーラー服を着て激しく動いたので、立ち上がると、手で顔を少し団扇のようにしてあおいでいた。

「今日は、まずは、前転の練習をします。二人交互に回ってください。前転は、単純だけど、一番、基本の技になります。最初に、手をマットにしっかりとつけるようにするのよ」

「はい、先生」

「では、制服を脱いで、マットの前に並んで」

僕たちは、ベンチのほうに行った。いつもウォーミング・アップまでは、制服を着たままして、それから脱いで体操服になることにしているのだ。

 僕と知子は、荷物の置いてある、隅のベンチの前に立った。僕は襟のフォックを緩め、すぐに金ボタンを上から外した。そして学ランを脱いで、ベンチの上に置いた。重い学ランを脱いで、半袖体操服になると、とても爽快な気分になった。今から思いっきり練習しようという気分になる。

 知子はいつも、すぐにはセーラー服を脱ごうとはしない。靴を履きなおし、靴下を整える。せいぜい、襟元のフォックを外すくらいだ。そして僕が体操服姿になったくらいから、セーラー服を脱ぎ始める。まずは、紺色のリボンを外す。それから、胸当ての周りのフォックを外し、両サイドファスナーを上げる。腕を上げながら上着を脱いでいく。そして、やっと僕と同じ、半袖体操服になる。知子の白い体操服に、ジャージの臙脂色が、とても映える。知子は丁寧にセーラー服をたたみ、ベンチに置き、マットのほうに歩いて行った。

 僕の後に知子が続いて順番に、マットの上で前転と側転をしていく。知子はマットの前にしゃがみ、頭を下に入れて、お尻を突き出して前転の構えをする。臙脂のジャージに包まれた知子のヒップは、引き締まっていて、いい形をしている。

 11月下旬の土曜、僕は器械体操部の練習に学校に行っていた。

 僕の学校には、元々、体操部があったわけではない。しかし、今度、市で器械体操の大会があり、それに僕の学校から男女各一名、代表選手を出さなければならなくなったのだ。それで、新たに「器械体操部」を作り、そこで、適当な男女一名ずつを6年生から選び、大会までの約3週間、強化練習をして、大会に出そうというのだ。

 体操クラブの部員は、僕と知子。顧問の先生は、担任でもある美津子先生。25歳の女性だ。体操は、中学高校で部活動としてやっていたらしい。

 時間が来たので、僕は家を出た。学ランの上着に、青色の学校ジャージのズボン。これが、登校までのスタイルだ。ジャージは二本白いラインが入っているタイプである。それに、運動用のキャップをかぶり、スポーツ・バッグを持って僕は、玄関を出た。



 交差点に着いたところで、向こうから知子が歩いているのが見えた。紺色のセーラー服の上着に、臙脂色のジャージを履いている。そして、運動用のキャップをかぶっている。僕と同じ制服ジャージの組み合わせだ。

知子は、ショートカットにすっきりした目鼻立ちの少女だ。超美人、と言う訳ではないが、むしろそのほうが、僕は近づきやすくて好感が持てる。

 知子はすぐに僕に気が付き、手を振ってきた。僕は、すぐに交差点を渡り、彼女のところに近づいた。

「おはよう、知子。ちょうどだったね」

セーラー服の胸元からは、白い襟が見えていた。冬用の制服の下には、夏用の体操服である、ファスナータイプの半袖シャツを着ているのだ。

「わたし、倒立前転がどうしてもできないのね~」

知子は歩きながら、知子は腕を後ろにしながら、言った。

「どうしても、足を直立したまま保てないのよねぇ。―君は、うまくできているよね」

「僕もまだまだだよ。むしろ、知子の側転を見ていると、いつも、きれいだなぁ、て思うよ。やっぱ、練習あるのみだな」

「ありがとう。わたし、今日も頑張るわ」

そんな他愛ない会話をしながら、僕と知子は、校門をくぐった。日曜の学校は、僕ら以外、今日は誰もいなくて、ひっそりしている。なんだか、いつも来ている学校とは違う場所に来たような気分だ。僕と知子はグラウンドを突き切り、体育館に入った。

戸をあけると、すでに電気が付いていた。体育館の壁の隅のベンチの前には、すでに美津子先生が来ていて、何かノートのようなものを見ていた。黒色のジャージ上下に身を包んでいて、首までファスナーを上げていて、やはり、大人の女性、て感じだ。戸が開く音で僕たちに気がついて、振り向いた。

「おはよう。二人揃っての到着ね。待ってたわよ」

「おはようございまーす」

僕と知子は、体育館シューズに履きかえると、先生のところへ走った。走ると、足音が体育館中に響いた。

「さあ、早速、始めるわよ」

意気込む先生の前に、僕と知子は並んだ。それから、最初の号令を僕がかけた。

「きおつけ、礼!」

それから、知子と声を揃えて、

「お願いしますー」

二人の声が、広い体育館に大きく響いた。部員二人だけで、しかも臨時の部活動ではあるが、始めと終わりの号令は、必ずするようになっている。遊びではなく、あくまで大会に向けて練習をしている部活動として練習しているという意識を持つためだ。





 昨日、夜に、大型スーパーへ寄ったのですが、

そしてまた、ジャージを着ている人を何人か見かけました。

 ジャージといっても、部活動帰りの中高生ではなく、普通の大人です。

中に、カップルでジャージ上下という人たちもいました。

 また、ジャージの着こなしから、スポーツクラブの帰りでもなく、

本当に、普段着でそのまま来ている、て感じでいた。

 意外と、みなさん、ジャージ、愛用しているんですね。


 見ていて、学校の体育の時間に着るジャージて、どちらかというと、

こういう日常のジャージに近い雰囲気があるのでは、と思いました。


変な例えですが、

アスリートのジャージ姿が堅い感じなのに対し、

日常のジャージは、柔らかい感じ。

そしてその柔らかさは、学校ジャージにもある。


学校ジャージは、本格的に運動をしている子以外も着るし、

体育以外でも、遠足などで着ることがある。

学校ジャージを卒業後も部屋着に使う、

ということを聞いたことがありますが、

それも、学校ジャージの持つ柔らかさにあるのではないでしょうか。



普段と違ってカジュアルな姿の人たちが多かったです。

 セーラー服に臙脂の学校ジャージの彼女は、その後も、体操服になることなく、体育の時間に参加していました。毎回、「今日こそ、セーラー服を脱ぐか?」と期待していたのですが、少しもその様子がなく、マット運動の授業は続いていきました。


 そして何回目かの、マット運動の時です。その日は、時間割の関係か、体育が2時間連続である日でした。1時間は、班でのマット運動の練習、2時間目は総仕上げとして集団での演技を披露する、実技テストの日でした。みんな、白色の半袖体操服の中、今日も、彼女はセーラー服にジャージで並び、いつものように準備体操をします。それから、班に分かれての練習です。今日も、セーラー服にジャージで彼女は、前転や側転などをしていました。


 1時間が終わり、休憩の時、彼女は体育館のステージの前あたりで、班の女子と輪になって何か話し有っている様子でした。

 休憩が終わると、いよいよ集団演技の発表です。みんな、マットの回りに体育座りをし、各班の演技です。自分の半の演技も終わり、彼女の班になりました。女子が立ち上がり、マットに向かい始めました。


 彼女も立ち上がりました。セーラー服を脱ぎ始めたのです。紺色のセーラー服を脱いで、白色の半袖体操服に、臙脂のジャージは、とても強烈に見えました。そのまま行くのかと思うと、彼女は臙脂のジャージも下し始めました。ジャージを脱ぐと、他の皆と同じ、濃紺のブルマが現れました。

 もう体操服を半ばあきらめていただけに、最後の体操服は、僕にとってはまさにサプライズでした。彼女は着替えるのに少し遅れたので、駆け足でマットに向かい、スタンバイを始めました。


 彼女も含めてみんな、何事もないように眺めている中で、僕だけドキドキしていました。体操服になってくれて嬉しいような、しかし残念な気持ちでもありました。

 セーラー服にジャージで、他の人と一人だけ違う彼女が、その他大勢になってしまったのは惜しい気もしましたが、集団の演技となると、やはり服装は揃えたほうがいいとも思いました。


 演技が終わると、彼女はセーラー服やジャージにはまるで気にせず、そのまま体操服にブルマで次の班の演技を見ていました。

 恐らく、休憩時間の女子たちとの話し合いは、「ブルマになったら?」というものだったのでしょう。

 彼女は最初から集団演技の時だけ半袖ブルマを一番効果的な状態で見せるために、とっておいたのか、それともその場のノリで(女子はブルマを嫌がりながら、男子以上に大胆なところがあります)なったのかは分かりませんが、思い出に残る体育になってしまいました。


 その後の彼女は、上着も臙脂のジャージをきるようになり、体操服は冬眠となってしまいました。


 



 小学校6年の10月頃、体育の授業でマット運動の時、皆半袖体操服でいる中で、一人だけ、このセーラー服にジャージのパンツで臨んでいる女子がいました。


 その子は、朝からセーラー服にジャージのパンツ、上着の下には半袖体操服を着て、登校していました。体操服は半チャックタイプのものです。

 午後からは体育があり、その時は、セーラー服は脱ぐのだろうと、その時を楽しみにしつつ、午前の授業を受けておりました。


 さて、昼休みに入り、皆、制服から白色の半袖体操服に着替えていきました。しかしその女子は、全く着替えようともせず、他の体操服を着替えた女子と、話をするばかりでした。

 そして、時間になり、体育館に集まりましたが、彼女はというと、朝からのまま、セーラー服にジャージという姿で、出ていたのです。


 そして、そのまま、見学者の位置ではなく、他の皆と整列しました。

 セーラー服の下には、半袖体操服を着ているとはいえ、 全員、並んでいる時、一人だけ、見学でもないのに制服を着ているのは、とても目立っていました。


 服装には厳しい先生だったのですが、セーラー服の彼女には何も言わず、号令、挨拶があり、その後、準備体操になりました。彼女はそのまま、皆と一緒に準備体操をしていました。


 準備体操が済むと、班に分かれてマット運動の練習に入ります。彼女は別の班だったのですが、彼女を遠くから眺めていました。


 セーラー服はウォーミング・アップ用に着てきているのであって、準備体操が終わって、授業になれば、脱いで半袖体操服になることを期待しつつ、見ていました。

 しかし、彼女は残念(?)なことに、準備体操が終わっても、そのままセーラー服にジャージの姿で、マットの上で側転や前転の練習を始めたのです。

 友達に足を支えてもらったりしながら、順番に彼女は、マットの上で側転や前転をしていきます。


 半袖体操服に短パンやブルマ姿ばかりの中で、一人だけセーラー服に臙脂ジャージ姿で並んでいる姿は、とても目立っていました。


 前転をする時には、セーラー服の間から見える白色の体操服が見えることがありました。また、ジャージのヒップや、足元の部分は、今でも強く印象に残っています。


 そして、僕も、彼女と一緒に、半袖体操服に青色のジャージのパンツで、その上に学ランで、マット運動に臨みたいと思いました。