12月中旬に昨年最後に次男と連れだって、用賀の 『 南方美術店 』 へ
行きました。
M さんに京都から買ってきた ’ にほひ袋 ’ を渡す為もありました。
年を越さないうちに ・・・・
前日拾った庭の紅いもみじや黄色の落葉も添えて ・・・・
「 私は友人、知人の ’にほひ袋 ’を選ぶのはその人のイメージや好みを考え
ながら、それは楽しいんだけど、M さんの好みが難しくて ・・・ 」 と 言いながら
渡したのは 浅い浅黄(あさぎ)色の地に小さな白と赤の花が描かれている
ものでした。
M さんは ’にほひ袋 ’を開けて、「 今までで一番この店に合っている香りの
ような気がする ・・・・ 」と言ってくれました。
『 南方美術店 』 は 若いロン毛のオーナーなのに、いつも品がいい
品揃いが楽しくて、よく通いました。
しかも銀座や青山の骨董屋と違い、手の届く値段なのです。
でも、初めて次男に勧められて 『 南方美術店 』 を 訪れた時は、246と環八が
交差した店の前で、30分待ってもタクシー1台通らなくて、「 こんな不便な所に
は2度と来ないわ。」 と言ったのに、どの店よりも質の高い品揃いと楽しい
会話につられて、何回次男と足を運んだことか ・・・・
「 こんな不便な ・・・ 2度と来ないわ。」 と 言ったことに触れると 「 確かにそう
言っていましたね。」 と M さんは笑いました。
私が 「 初めて来た時は確か青梅煮を少し持ってきたから、6月の初めに
来たのね。 すると半年間のお付き合いって訳ね。」 と言うと、
M さんは 「 もう1年間位お付き合いしているような感じです。」 と言いました。
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3人で店の品物についてあれこれ話しながら、「 私はここで かけがえの
ない ” 緑翆 ” という抹茶茶碗と、都忘れが絵付けされた蕎麦猪口と、
可愛い掛け仏 と、3つも出会って買ってしまったから、もう何も買わないわ。」
と言うと、次男が 「それは絶対にないよ。 必ず出会ってしまうもんだよ。」 と
何故か断言しました。 ・・・・・
出されたお茶を飲みながら改めて店内を見渡すと、店に入った時から
目に入っていた江戸時代の襖絵の一部で、渋い黄土色の地に白やピンク
の撫子の花々が描かれたものが、とても気になりました。
横長に切り取って、モダンなグレーの額装がしてありました。
「 モダンな額で、古めかしい木の額でないのもいい感じね。」 と 言うと M さん
も 「 そうですね。 」 と 同意しました。
とても渋くて上品で、実家の父の寝室の襖を思い出しました。
私はその襖絵をしばらく手にして見入ってましたが、「 また出会ってしまった
わ。」 と言うと次男が 「 酒井抱一の画が好きだしね。」 と 相槌をうちました。
M さんは 「 抱一が好きなのですか?」 と少し意外そうな声を出しました。
地味だけれど、しみじみと見ていたい画なのでした。
可憐な撫子の花も私の好みにピッタリで、嬉しいものでした。
結局、舌の根も乾かぬうちにというか、その日最後に私はその襖絵断簡
を買ってしまいました。
なるほど、” 出会い ” とは突然来るものなのですね。
『 南方美術店 』 のホームページは http://minakata-antiques.com/