~お湯をたずねて三千歩~ | マヌエル洋平ブログ

~お湯をたずねて三千歩~

今日、柏駅から柏公園へ向かう旧水戸街道で、老夫婦に突然声をかけられた。
ちょっと頼りない感じの微笑ましい老カップル お茶

奥様 「あの~すみません。このへんにお風呂があると聞いたんですが」
ぼく 「お風呂・・・ですか・・・?ゆの華(=天然温泉)ですかね?」
奥様 「はい。この近くではありませんか?」
ぼく 「ああ、それでしたら、この道をまっすぐ行くと、16号線にぶつかりますから、そこを右に曲がればありますよ」
奥様・ご主人 「あ~、本当にありがとうございます!」


僕はその丁重な言葉を背に帰路を急いだ走る人

広い16号線を渡りきると、向こう側にそのご夫婦が無事に道を曲がって、「ゆの華」温泉に向かうのが見えた。

「はぁ、よかった。」 音譜

そう思った瞬間、ご主人はさらに道を曲がって全く違う方向に歩きだしてしまった。奥さんは、少し慌てて後を追うような格好。なんとなく足元がふらついている。

「あちゃ~!ちがうちがう!! そっちじゃないよ~~あせる

どんなに心で叫んでも、二人は広い国道16号の向こう。引き返して教えようと思っても、信号はなかなか変わってくれない。 信号を待っている間に、ついに姿が見えなくなってしまった。
慌ててると、偶然真横には友人が・・・!お天気キャスター○○くん。すっごく久しぶりだアップ

「あ~!話しかけたいな!でも話かけると、長話になっちゃう!きっと話は尽きないだろう。ここは気づかれちゃまずい。」
そう思うと、なぜか僕は無意識に頬をふくらませて、眼を細めて別人を装った(笑) ダウン

信号が切り替わり、猛ダッシュ!しかし、どこにも見当たらない。ちょっとした捜索の気分。
しばらくすると、まったく見当違いの住宅地の一角に迷い込んでいるお二人を発見した。
ホッ
「こちらですよ~!」キラキラと言うと、ご夫婦はびっくりした後、すごく申し訳なさそうな、でも、安心したような表情を浮かべた。

主人 「あああああ、わざわざすみません~」
ぼく 「いえいえ、国道の向こう側で、お二人が見えたものですから」
奥様 「あら~、すみません。いや、主人がこっちだっていうもんですから」
ご主人は苦笑い。
奥様 「私は目がほとんど見えないんです」


その奥様が僕を見ているようで、空を見ているように話かけている理由がわかった。
そのとき感じた。このご主人は奥様の目になっているのだと。
不器用で、いかにも頼りない感じだけど、老いてこそ繋がっている深い愛情の輪郭が見えた。それはまるで、大地に根付いている木の根っこのようで美しい・・・

聞くと・・・このお二人は、わざわざ松戸から来たそうだ。僕はゆっくりと温泉施設の前まで歩調を合わせた。

ぼく 「もう、あのノボリがある場所が、ゆの華温泉ですよ」
夫婦 「本当にありがとうございました」


深々とお辞儀をされ、なんとなく心が浄化された。しかし、特別良いことをしたとは思わない。 美談でもない。人によっては余計なお世話だったかもしれない。
このご夫婦がゆったりとお湯で温まって、疲れをとって、ふと今日のことを思い出してくれれば、ちょっとうれしいかも合格

・・・・・

目の前にあるものが見えない奥様と、不器用にナビゲートするご主人。
そして、気づかなくても良い、遠くまで見えてしまう自分。
最近、検査やってないけど、まだ視力1.5はありそうだ。
見えないものは多いけど目