14歳くらいの時は本気で自分はミュージシャンになるんだと思っていた。
20歳の時には音楽業界で生きていくんだと本気で思っていた。
25歳の時には一生結婚もしないし、子供も作らないで生きていくんだろうと思っていた。
35歳になった今は結婚して子供もいる。
「自分の思うがまま自由に生きることが一番幸せだ」とずっと思っていたはずなのに今では子供がいない人生は考えられないとさえ思うようになった。
昔から子供が欲しいと言い続けてはいたものの現実に自分に子供が出来るなんて少しも想像すらしたことはなかった。
結婚した時も病気のこともあって子供がいなくても2人で楽しく生きていけるだろうと思っていた。
何処かで諦めていたし現実味のあることではなかったように思う。
放射線治療の時に病院から冷凍保存した精子の保存期限は1年だと言われた。
申告が無ければ破棄すると言われていたのに1年経った時には忘れてしまって破棄されてしまったくらいだから相当自分の中で子供が出来ることは現実と乖離していたように思う。
今は子供がいる。
いなくなってしまったら人生を捨ててでも取り戻したいと思うだろう。
それほど自分の生きる意味になっていることに驚く。
人間の遺伝子のメカニズムで勝手にそうなっているのか単に愛情なのかは分からない。
「仕事してて何が一番楽しいと感じる?」と花屋の小栗さんに聞かれたとき1つも無いと答えた。
正確には満足感や達成感は感じることはあるが楽しいと感じたことは無い。
自分の中で仕事とプライベートを地続きにすることが出来ないんだとその時気付いた。
仕事は仕事で誰より上に行こうという野心はある。
100%金の為ではない。
でも仕事はそもそも金の為にするものであるということも常に感じている。
仕事で家庭が疎かになることは本末転倒だと思う。
まさか自分が「家庭が」とか「仕事が」とか言う日が来るなんて思ってもいなかった。
人と違う人生を歩むことが格好良いと思い、アウトローに憧れて生きてきたような凡人の自分が辿り着いた先は世の中にありふれた人生なのかもしれない。
でも結局ここが自分の一番の幸せだったんだと思う。
