今年2022年2月下旬に勃発したロシアによるウクライナ侵攻は
8か月近く経った現在の10月もまだまだ続いており、

この先も終わりの見えない状況にあります。

そんな戦争とは直接には関係のない、
経営のビジョンについて語っている
山口周さんと中川淳さんの対談を収めた本
「ビジョンとともに働くということ 「こうありたい」が人と自分を動かす」
を読んでいて、とても心ひかれる箇所がありましたので引用しておきます。

ビジョンとともに働くということ_2022.07.14

山口「僕はピーチ・アビエーションという格安航空会社の

   お手伝いもしているんですが、
   10年ほど前に当時CEOだった井上慎一さんから
   「人事制度づくりを手伝ってほしい」と声をかけられたときは、
   そのビジネスに対してかなり懐疑的だったんです。
   すでにデフレにうんざりしているときだったので、
   「また安くするのか」と思ったんですよね。

   それで最初に
   「井上さんは、この会社を何のためにつくったんですか」

   と質問したら、
   「僕は戦争をなくしたいんですよ」と言うんです。
   格安航空会社と戦争に何の関係があるのかわからないじゃないですか。
中川「たしかに、意表をつく答えですね。」
山口「聞くと、井上さんは
   「若いうちに外国に行ってそこの文化に親しんだら、
    爆弾なんか落とせないでしょ」と言うんです。
   だからお金のない若い人たちがどんどん外国に出て行って、
   人々と交流できるようなインフラをつくりたいんだ、と。
   僕もそういう話は好きなので、懐疑的な気持ちは消えて、
   「ぜひお手伝いさせてください」となりました。
   (………中略………)
   共感できるビジョンには求心力が働いちゃうので、

   経営資源が集まるんですよ。
   言葉を掲げるだけでゼロから経営資源を集めてしまうだけの

   力を持っているのが、ビジョンのすごいところです。」

これを読んで、なるほどなぁと実感をもって共感しました。
私も若い頃にアジアを中心に諸外国を訪れた経験があり、
行った先々の国で受けた親切や素晴らしい文化に触れた経験は
今でも私の貴重な財産として残っております。

他方で、ロシアやウクライナといった陸続きの隣国同士の場合、
相互の国民が互いに頻繁に行き来していたはずだったろうに
そうした交流が今回の戦争の抑止力として十分に機能しなかった
という現実も直視し、真摯に考える必要があるでしょう。

それでも、相互交流・文化の力を信じたいと思わせる
経営を語る本にしては珍しい趣きの著作です。

こうした本を読んだ上で、起きてる現実を見返して考えると
今更ながら経営におけるビジョンの大切さを認識させられます。


[上記引用:2022.05.10、祥伝社 P55~56 ]


[ 2022.10.19(水)日刊 ]