平成から令和へ代替わりした2019年も
あと残り1週間余りになりました。

平成を振り返る記事や番組を見聞きした今年、
同じような趣旨の小説を読みました。

作家の葉真中顕(はまなか あきら)さんの
最新クライム ミステリー(犯罪小説)、
「Blue(ブルー)」 です。
 
Blue1_2019.12.19
 
平成の始まった1989年に生まれ、
平成の終わった2019年に死んだ
一人の男が主人公です。

東京郊外の中流家庭に生まれ育った女性が、
ダークサイドへ墜ちていく中で生まれたのが、
Blue(ブルー)と呼ばれる主人公の青(あお)です。

役所に出生届を出されずに無戸籍のまま育ち、
自堕落な母親に巻き込まれる形で人を殺め……、
というストーリーを、関係する人々の多人称形式で紡ぎ、
平成の暗黒面を語りきろうという意欲的なフィクションです。
 
Blue3_2019.12.19

メインの筋は、殺人事件の捜査の進行に沿って進むので、
いわゆる警察小説の趣もありますが、それに留まらず、
平成の世相を代表するようなトピカルな話題や事象が
てんこ盛りなので、ちょっとした平成史になってます。

「あっそうそう、コレはあの時に発売されたんだ」 とか
「あの曲は、この頃に流行ってたんだっけ」 などなど、
当時を懐かしく振り返るという楽しみ方もできます。
 
Blue2_2019.12.19

平成元年の初日に生まれ、平成31年の最後の日に亡くなる
数奇な運命を辿った一人の男が狂言回しをする
少し風変わりな時代史として楽しめる一冊です。

読み方は、人それぞれだとは思いますが、
「家族というものを重視しぎるのは危険である」
というのが、この本の主題のように感じられました。

夫婦別姓やLGBTなどについて政策も世論も分かれてる昨今、
家族や血縁について考える機会を与えてくれる本だと思います。
 

[ 2019.12.23(月)日刊 ]