故郷に帰りて姪御と戯るる話 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

いい年をこいているにも関わらず、

 

所帯も持たずにフラッフラしていて、

 

盆と正月付近に、

 

(盆と正月直下でないところがまた残念ポイントUP)

 

里に帰ることだけが、

 

レゾンデートル(存在意義)であることのこのワタクシが、

 

年が明けてから重い腰をあげて、

 

ようやく里帰りしましたよというだけのお話。

 

 

 

夜中に実家に到着し、

 

飯食って風呂入って寝て起きたら、

 

もう「こんにちは」でOKなくらいのお時間。

 

我が生家には、

 

長兄であるワタクシを差し置いて、

 

とうの昔に姓を変えてしまっている妹御と、

 

2歳半になる姪御が居りました。

 

ほどなく昼食の時間となり、

 

皆(祖母と両親と妹御と姪御とワタクシ)で食事を摂り、

 

まったりとしていたのですが、事態は急転直下。

 

妹御は、甥御を迎えに行くため出立してしまいました。

 

時を同じくして父君も外出。

 

我が家には、

 

祖母 母君 姪御 ワタクシ という4名が残されたのです。

 

 

 

 

当初、母君と戯れていた姪御ですが、

 

時は刻々と過ぎ去り、

 

夕飯の支度をする時間に至り始めており、

 

母君は夕食の支度をし始めたのです。

 

 

 

となると、姪御の相手をする者が居ない。

 

夕食の支度をしている母君は言わずもがな、

 

あと数年で白寿を迎えんとする祖母に

 

世話を任せるというのも無責任に過ぎるわけで、

 

自然(じねん)、ワタクシに白羽の矢が立つ羽目になるのです。

 

とは言え、姪御はワタクシに懐いていないわけで・・・

 

 

 

先述した甥御(5才半)は男子ということもあり、

 

組み立て建築式玩具や、

 

肩車やジャイアントスイング等々で、

 

帰省する度に、

 

「おっちゃーん」

 

と突進してくるぐらいには心を掴んでいるのですが、

 

やはり女児だということもあり、

 

姪御は懐いてくれないのです。

 

そもそも、肩車等々の肉弾的スキンシップに至ろうとすると、

 

号泣しますのでね!

 

オジさん悲しい!!

 

その日はほぼ半年ぶりの邂逅だったのですが、

 

瞬時に母親(妹御)の後ろに隠れやがりましたからね。

 

オジさん超悲しい!!!

 

 

 

なんてことを言いつつも、

 

相手をしなければ捗るものも捗らない。

 

色々と策を弄し、

 

兄(甥御)が普段独占している遊具とかで

 

気を惹いてみても全く効果なし。

 

最終手段としてジブリDVDにまで手を出してみましたが、

 

けんもほろろ。

 

これはもう成す術なしだな、

 

と諦めていたところ、

 

姪御がある玩具を持って近付いてきたのです。

 

それは、本のような形の電子器具。

 

任意のボタンを押すことで、

 

20種類にも及ぶ童謡を奏でる

 

21世紀的ハイテク玩具だったのです。

 

 

 

手慣れた様子で電源を入れた姪御がボタンを押し、

 

前奏が流れ始めます。

 

こ、これは・・・、「アンパンマンのマーチ」

 

不意に遠い記憶が思い起こされますが、

 

それを拭い払いつつ考えます。

 

これは、千載一遇の機かもしれぬと。

 

覚悟を決めたワタクシは歌い始めました。

 

「そおだ、おそれないーで、みーんなのために」

 

姪御も一緒に歌っている。

 

周囲にはワタクシと姪御のユニゾンが、

 

高らかに響き渡っています。

 

これは・・・、いけるかもしれない・・・

 

 

 

 

曲が終わると、姪御は続けざまにボタンを押します。

 

次は・・・

 

「どんぐりころころどんぐりこー」

 

 

 

 

次は、

 

「そおだー おそれないーで」

 

 

 

 

 

次は、

 

「どんぐりころころー」

 

 

 

「そおだー おそれないーで」

 

 

 

「どんぐりころころー」

 

 

「そおだー」

 

「どんぐ」

 

「そお」

 

「どん」

 

 

・・・

 

 

・・・・・・・

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

何度歌ったことでしょう。

 

唐突に、姪御は肩から掛けていたポシェットに手を掛けました。

 

 

 

 

最近姪御がハマっているもの。

 

それは、「硬貨」です。

 

みんなにもらった硬貨を、

 

ポシェットに入れて大事にしているのです。

 

 

 

そしておもむろに

 

「おっちゃん・・・」

 

と言いながら姪御が差し出したものは・・・

 

 

 

 

5円硬貨

 

 

 

 

でした。

 

 

 

おお、おっちゃんの歌が、

 

姪御の心を動かしたのか・・・

 

 

 

 

なんて地味に感動していたのですが、

 

姪御からお駄賃を貰うわけにはいかない。

 

 

 

丁重に返却した5円玉をポシェットに仕舞った姪御は、

 

再びボタンを押したのです。

 

 

 

「そおだー おそれないーで・・・」

 

「どんぐりころころー」

 

「そおだー」

 

「どんぐり・・・」

 

 

 

さすがにちょっと飽きてきたので、

 

「おにーのぱんつは」

 

とか、

 

「しょっ しょっ しょーじょーじー」

 

とか横からボタンを押して歌いつつ、

 

どれだけの時間が過ぎたでしょうか。

 

再び姪御がポシェットを開き始めたのです。

 

 

 

「おっちゃん・・・」

 

そしてワタクシに渡したのは、

 

 

 

 

10円硬貨

 

 

 

でした。

 

 

 

おお、時給が上がった・・・

 

 

 

とか喜んでいたのですが、

 

まあこの調子だと、

 

また夏に帰った時にもゼロからになんだろなー、

 

という印象を受けました。

 

まあ、今回の体験で、

 

歌は結構有用だと判明したので、

 

次に生かしたいと思います。

 

 

 

おっちゃんはがんばります。