2014・1.「外田警部、カシオペアに乗る」古野まほろ | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

2014年

1冊目

「外田警部、カシオペアに乗る」

古野まほろ

光文社

外田警部、カシオペアに乗る/光文社
¥1,728
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あにょう、アタシ、愛媛県警警察部の外田、外田いいます。ちょーっとだけお時間頂戴しても、よろしゅうござんしょか


農協の経理のような顔に、昭和の哀愁を感じさせる銀縁眼鏡。よれよれにくたびれたスーツに、安手のコート。ところ構わず葉巻の煙を噴き上げ、口を開けばディープな実予弁――。

冴えない外貌ながら、「猟犬」としては超一流の外田は、連続強姦殺人犯の行方を追って、愛媛を飛び出し東奔西走の身。

しかし、行く先々で、謎めいた殺人事件に遭遇する。それも、容疑濃厚な被疑者に限って鉄壁のアリバイに守られているのだ・・・。

手強い犯罪計画の立案者たちを、外田はどうやって追い詰めるのか?


あの、ぞなぞなコート野郎! 惚けた顔をして――!!



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




はっはっはっは!


2014年の1冊目だって!


誤植じゃないよ!


まぢで2年分くらいたまってるんだよ!


笑っちまうね!


ほほほ~。



・・・とまあ、自虐はこのくらいにして。




古野さんは今を遡ること十数年前、


講談社のメフィスト賞を受賞して小説家デビューをされました。


そのデビュー作「天帝のはしたなき果実」はその後もシリーズ化し、


講談社と袂を分かってからも幻冬舎にてシリーズは継続中なのですが、


(余談ですが、講談社とは最近和解した模様です)


その当時、「天帝シリーズ」と並行してもうひとつのシリーズも執筆されていました。


それが、『探偵小説のためのエチュード「水剋火」』から始まる、


「相克シリーズ」(あるいはタイトルそのまんま「探偵小説シリーズ」)全5巻です。


探偵小説のためのエチュード 「水剋火」 (講談社ノベルス)/講談社
¥903
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このシリーズは愛媛県実予市(実在せず。松山市と思われる)が舞台で、


帝都東京から実予の高校に転校してきた、


激しい妄想癖のある天才かるた(百人一首)少女・水里あかねと、


クラスメイトの美少女陰陽師・小諸るいかが中心となって繰り広げる、


本格ミステリー+陰陽バトル+かるた対決という、一風変わったミステリーです。




そして、二人が事件に遭遇したとき、


駆けつける刑事こそが、今作の主人公・外田保丞(やすすけ)警部なのです。




この外田警部。


警視総監から捜査に関与することを認められているるいか


(実はるいかは、陰陽師の中でも最高権威者・陰陽頭なのです)


に顎で使われ、右往左往している役回りなのですが、


そのくせ、関係者の一挙一投足を見逃さない観察力を持っており、


そのためるいかやあかねが窮地に陥ることもしばしば、という、


このシリーズだけで見れば、不必要なほどキャラの立った人物でした。




それが、まさかまさかの主役抜擢。


以前から「相剋シリーズ」には「相生シリーズ」という続編が存在していると予告されていて、


いずれ幻冬舎かどこかで刊行されるのであろうと心待ちにしていたのですが、


まさかそれより先に、完全サブキャラ扱いだった外田警部が


主役に抜擢されるとは、驚きでした。




で、長々と前フリばかり語ってしまいましたが、ここからが本書の話。




短編集で4編が収録されているのですが、それらはすべていわゆる「倒叙モノ」。


犯人が殺人を犯すところから物語は始まり、


死体が見つかるが、一見すると犯人がやったようには思えない状況。


そこから外田警部が犯人の企んだ仕掛けをどのように見抜くのか、が主題になっています。




まあざっくりと言うならば、コロンボや古畑のような感じですね。




というか、外田警部はロス市警に出向した過去があり、


かのカミさんの話ばっかりする刑事さんの直弟子だということが


本人の口から語られたりするんですが・・・




初期の段階で犯人の口にした不審な言葉、


あるいは不審な行動を、その卓越した観察力で見抜き、


あらすじで太字で書いているようにねちっこく


何度も何度も犯人のもとを訪れ、質問しまくり、


その会話の中に奸計を仕込み、


逆トリックで一気に堕とす。




その鮮やかさと嫌らしさが、外田警部の魅力です。




ただ、その嫌らしい話術、


聞かれたくないところをぐいぐい突いてくる容赦の無さ、


そしてなにより、姿かたちや喋り方を含めた全体的な胡散臭さは、


「この人とは会話したくないなぁ」と思わせるのには充分で、


綿密に計画を練って、一世一代の大勝負を敢行したのに、


運悪く外田警部が居合わせてしまうなんて、と


犯人たちに同情してしまったり。




「外田警部、カシオペアに乗る」

「外田警部、のぞみ号に乗る」

「外田警部、あずさ2号に乗る」

「外田警部、市内線に乗る」




の4作収録ですが、


市内線が一番良かったです。


古野さんはごりごりの本格継承者ではあるのですが、


加害者側の犯行に至る心の動きを描くのも巧いんだよなぁ、と


改めて実感しました。


この本が出たあと、今度は長編が1冊出ているのですが、


またこんな感じの短編も読みたいですね。





さて、復帰一発目の感想なのに、


えらく長々と語ってしまった。


こんなんだからなかなか進まないんだよなぁ、と自省はするものの、


やぱり書きたいものは書きたいので、


仕方ないですな。



先は長いですが、ぼちぼち書いていきまする。




って、



何だこの時間。早く寝ないと・・・