2012・75.「隻眼の少女」麻耶雄嵩 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

2012年

75冊目

「隻眼の少女」

麻耶雄嵩



隻眼の少女/文藝春秋
¥2,052
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山深き寒村で、大学生の種田静馬は、少女の首切り事件に巻き込まれる。


犯人と疑われた静馬を見事な推理で救ったのは、隻眼の少女探偵・御陵みかげ。


静馬はみかげとともに連続殺人事件を解決するが、18年後に再び惨劇が…。


日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞をダブル受賞した、超絶ミステリの決定版。



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知ってる人は知っている。



知らない人は全然知らない。(メディアミックスとかあんまりないしね)



しかし、三十路越えのミステリ読みでこの名を知らなかったら確実にもぐりだと言わざるを得ない。



それが麻耶雄嵩という人です。



盲点を突くような、あるいは固定観念をあざ笑うような、



そんな作品を数多く発表されている方なのです。



そんな麻耶さんの過去作から考えると、驚きという点ではちょっと少なめかなという印象でした。



「ええっ!」というよりは、「ああ、そう来たのね」というくらいの感じで。



アイデアとしては素晴らしいし、古いしきたりが残る寒村や水干姿の隻眼少女というディティールは



物語の面白さを引き立ててはいるんですが、



麻耶さんなのにこれだけ?



という印象は否めませんでした。



まあ麻耶さんとて毎回毎回そんな強烈な掟破りを繰り出しているわけではないのですがね。


しかしどうしても、印象の強かったものと比べてしまうので。



こんな読み方ではいかんなぁ、と少し反省。



てなことを書いておいてアレなんですが、面白いか面白くないかで言えば、



間違いなく面白いんですよ。



ただこちら側が嫌にスレでしまっているだけで。



んー、なんだかフォローになってないような・・・。



あんまりネタバレできないのでぼかした表現になるんですが、



ラスト近辺の怒涛の展開は凄まじさの一言でした。



犯人の口から語られる衝撃の事実、というか心情の吐露。



「誰が犯人か」や「どうやって殺したのか」という目に見えるものが明かされて、



世界ががらりと色を変えるのがミステリの醍醐味の一つだと思うんですが、



それを目に見えない「心」の部分でやってのけたとでも言うか。



それが狙いだったのかどうかは分かりませんが、



このラストがあってこそのこの作品だな、とは思いました。



うーん、あんまり説明になってないか。



でもこれ以上言うと色々とまずいので、これくらいで。