72.「山魔の如き嗤うもの」三津田信三 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

72冊目

「山魔の如き嗤うもの」

三津田信三

講談社文庫



山魔の如き嗤うもの (講談社文庫)/講談社
¥860
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忌み山で続発する無気味な謎の現象、正体不明の山魔、奇っ怪な一軒家からの人間消失。


刀城言耶に送られてきた原稿には、山村の風習“初戸の成人参り”で、恐るべき禁忌の地に迷い込んだ人物の怪異と恐怖の体験が綴られていた。


「本格ミステリ・ベスト10」2009年版第一位に輝いた、「刀城言耶」シリーズ第四長編。




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うまい仕掛けと巧妙なミスリーディングにやられた作品でした。




登場人物の少ない山村での事件、となるとどうしても犯人候補は絞られ、トリックの内容はさておき犯人くらいは見抜ける、というか勘で当たってしまったりすることはよくあるんですが、そうさせない展開の妙。




合わせて、「現実」に半分以上のウェイトを置きながらもところどころで湧き出る山魔という「幻想」。




時代設定や舞台設定を大いに活用した、刀城言耶シリーズならではの素晴らしい作品でした。




謎解きで、最初は必ず外してくるボール先行の話術を繰り広げる言耶も健在。




途中で言耶の語った推理がそのまま私の予想とそっくりで、それが出てきたときの喜びと、外れた時のがっかり感と言ったら、もう・・・




というように、良い作品だったのですが、なぜかちょっと不満が。というか、満足なはずなのに、何かが足りないようなモヤモヤした気持ちになってしまい。




なぜだろうな、と思ったら、既読の同シリーズ作品「「首無の如く祟るもの」 がこの作品に増して面白かったからでした。




こういう比較対象はよくないなと思いながらも、どうしても、ねぇ。




とまれ、未読作品がまだいくつもあるこのシリーズ。




わくわくしながら他の作品も楽しみたいと思います。