68.「密室殺人ゲーム マニアックス」歌野晶午 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

68冊目

「密室殺人ゲーム マニアックス」

歌野晶午

講談社ノベルズ



密室殺人ゲーム・マニアックス (講談社ノベルス)/講談社
¥840
Amazon.co.jp


“頭狂人”

“044APD”

“aXe”

“ザンギャ君”

“伴道全教授”


奇妙なハンドルネームを持つ5人がネット上で日夜行う推理バトル。


出題者は自ら殺人を犯しそのトリックを解いてみろ、とチャット上で挑発を繰り返す!


ゲームに勝つため、凄惨な手段で人を殺しまくる奴らの命運はいつ尽きる!?


シリーズ第3弾。



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ありそうでなかったシチュエーションを繰り出し、物語が進むにつれてネット世界でしか関わりのなかった参加者たちの間柄にも変化が生じてきて、最後にものすごいオチを持ってきた第1弾「密室殺人ゲーム 王手飛車取り」。




あそこからどうやって続編を書くんだろう、と思っていたら、コペルニクス的転回というか灯台下暗しというか、なるほどと膝を打つ「続き」を見せてくれた第2弾「密室殺人ゲーム 2.0」。




それならいくらでも続編は可能だよな、と思いながらのこの第3弾「マニアックス」なのですが、もちろんまた新たなたくらみが仕込まれています。




これまでの「密室殺人ゲーム」は、あくまでも1人の出題者と4人の回答者という内輪のイベントだったわけですが、今回は動画配信により不特定多数の視聴者を巻き込み、殺人を予告。




ライブチャット上の回答者である4人と警察の目はもとより、その他大勢の野次馬たちへも露見しないようなトリックを考案せねばならないわけです。




そうなると当然のごとく、ややこしいというか回りくどいというか、ひねくれてて複雑な犯行を行わなくてはならないわけで。




まあ、そういう意味ではまさにマニアックス。




派手さやインパクトはこれまでの作品より落ちるかもしれないし、支持する人も減るかもしれないなという内容だったのですが、個人的にはとても楽しめました。




ライブチャットの5人の行う犯行自体が「マニアック」なモノになっているのは当然のこと、小説としてもこれまでのシリーズ作品よりも「マニアック」になっている、という意味でも「マニアックス」なのかもしれないなと思ってみたり。





でもそれを、「支持するしないは眼中にない。面白そうだと思ったのだからやったのだ」という姿勢で実行するというのが、この作中の殺人事件とこの小説自体にも言えることのように見えて、「貫いてるなぁ」と感心するやら呆れるやら。




まだ続編があるということなので、どのような驚きを見せてくれるのか楽しみです。