「アリアドネの弾丸」
海堂尊
宝島社
- アリアドネの弾丸/宝島社
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東城大学病院で再び殺人事件が!
「この事件はすべてが不自然すぎる。絶対にどこかがおかしいんだ」
東城大学病院に導入された新型MRI・コロンブスエッグを中心に起こる事件の数々。
さらには、高階病院長に収賄と殺人の容疑がかけられてしまう!
殺人現場に残されていた弾丸には、巧妙な罠が張り巡らされていた…。
不定愁訴外来の担当医師・田口公平が、駆けつけた厚生労働省のはぐれ技官・白鳥圭輔とともに完全無欠のトリックに挑む。
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「完全無欠」なんてどんなに高いハードルだよ、と思っていたのですが、読んでるうちに納得。
何故ならば、序盤にはハッキリとは明記されていないとはいえ(ほんのりとは匂わせまくりでしたが)、犯人は個人ではなく組織なのです。
折しも東城大では、「Ai(死亡時画像診断)センター」設立を間近に控えており、死亡診断を医療に明け渡すことに危惧を抱いた組織が行った、計画的な犯行だったのです。
と、ここまで言えばシリーズを読んでる読者ならだいたいその「組織」の正体が分かりそうですがね。
でもまあいいんです。元々バラしてるような書き方だし。
そんな一筋縄ではいかない、というか一般庶民が太刀打ちできるような相手ではない連中が相手で、登場人物の中でその陥穽に気付いているのは白鳥だけなわけです。(高階院長あたりは気付いているのかもしれないけれど、具体的な行動には至っていないし)
だから、これまでの作品と比べて、白鳥がふざけないことふざけないこと。サボらないことサボらないこと(笑)
いつもの軽口は健在なんですが、仕事ぶりがすごーく真面目なんです。
それだけ白鳥にも余裕がなかったということなのだろうけど、いつものノリを期待していた読者にとっては、ちょっと不完全燃焼感があるかもしれません。
そして終盤、白鳥が皆を集めて「さて」という謎解きパート。
まさかこんなにしっかりミステリしてくるとは思いませんでした。
一人の医学的知識所持者による『嵐の山荘』的解法にも似た、多分に限定的な条件下での特殊な謎解きではあるのだけど、意外性も相まって十分に楽しめましたね。
さて。残りは最終巻である「ケルベロスの肖像」を残すのみとなりました。
他にも色々と派生している海堂作品ではあるのですが、やはりこのシリーズがひとつの軸になっていると思うので、その完結にはどのような物語が控えているのか、とても楽しみです。
今作でも、田口・白鳥をはじめ、島津や彦根も登場し、名前だけなら姫宮も登場してかなり豪華でしたが、次作では更なる盛り上がりを期待してしまいます。
できれば、速水にも登場してほしいなぁ…。