25冊目
「遺稿集」
鴨志田穣
講談社文庫
- 遺稿集 (講談社文庫)/講談社
- ¥730
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書き残したのは嘘?真実?
『僕はささやきながら彼女の手を強く握りしめた。それから2人はずっと手を離すことはなかった。』
この一文で絶筆し、42歳の生涯を閉じた「カモちゃん」こと鴨志田穣。
彼がアルコール依存症の治療前からガン闘病中に書いた未刊行原稿のすべて。
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うーむ、元々の西原理恵子ファンであり、西原さんや鴨ちゃん(+ゲッツ板谷さんとか色々)を知っている身としては説明が不要なこの本なのですが、知らない人にこの本の意義を説明するのは難しいなぁ・・・・・・。
ざっくりとした説明になりますけど、この鴨志田さんという方は、若いころに戦場カメラマンを志して東南アジアへ行き、一時話題の人となった橋田信介さんの弟子となり各地の戦場を巡り、その圧倒的な光景から逃れるために薬物依存に陥り、薬物依存から逃れるため仏門に入ったタイでたまたま出会った西原さんと結婚したものの、アルコール依存症などが原因で離婚し、その後アルコール依存を克服して籍は入れてないものの西原さんと復縁、しかし癌に侵され42歳でお亡くなりになった方です。
その鴨志田さんの死後、書籍化されていなかった文章を纏めて綴られたのがこの本です。
西原さんのマンガの中で、あるいは自分の著書の中で、非常識でメンタルの弱い、いわゆる「困った人」として扱われていることの多かった鴨ちゃんの、一番素に近い部分が描かれているんだろうな、と読んだ後に思いました。
特に、西原さんと出会ってからプロポーズするまでの話は、よく西原さんのマンガで面白おかしく描かれてはいたものの、鴨ちゃん視点で書かれているのを読んだのは初めてで、なんか感慨深いものがありましたね。
一般的には決して幸せな人生と呼べるような生涯ではないのだろうけど、愛する家族と迎えることのできた最期は、鴨ちゃんにとってどれほど救いになったんだろう。
以前「毎日かあさん」で西原さんが描かれていた鴨ちゃんの最期のシーンも思い出し、ちょいと涙腺が緩んでしまいました…
五年以上前にお亡くなりになっておられるのですが、改めてご冥福をお祈りいたします。