20.「ソウルケイジ」誉田哲也 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

20冊目
「ソウルケイジ」
誉田哲也
光文社文庫
ソウルケイジ (光文社文庫)/光文社
¥720
Amazon.co.jp






まもってやれるだろうか。この俺に。

多摩川土手に乗り捨てられたワンボックスカーから、血塗れの左手首が発見された!

姫川玲子たち捜査一課殺人犯捜査係の刑事たちは、所轄と組んで捜査にあたる。

しかし、手首の持ち主と思しき男の周辺を調べていくうちに、つぎつぎと意外な事実が浮かび上がって……。

進境著しい俊英・誉田哲也が渾身の力をこめて描く、丹念に積み上げられた捜査小説にして、胸をうつ犯罪小説の白眉!




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以前読んだ「シンメトリー」と同じシリーズの作品です。




今回は短編集じゃなくて長編です。




今作も、ミステリ読みとしてはちょっと違和感を感じる展開だったなぁ。




知恵を絞って真相を突き詰めるのではなく、ある程度予測は立てるものの基本的には人海戦術で総当たり。




その結果、謎のヒントとなる事実が発覚し、それをもとに再び捜査、という繰り返し。




いや、それが警察という「組織力」て捜査をするのには適しているのだろうし、取りこぼしや事実誤認が少ないであろうことはもちろん分かるのだけど、何だかカタルシスがあんまり感じられませんでした。




もうちょっとリアリティよりはドラマティックさに重きを置いてほしいなぁ、という気持ちがどうしても払拭できないのは、やはり普段読んでいる本との構造の違いがありすぎるせいなのでしょうか。




まあ、上記のはあくまで、偏った読書傾向を持つ私の主観ですからね。

この作品がおかしい、とか言っているわけではないので誤解なきように。




かたや、この事件の動機はすごかったです。




すべてを捨てまで、守りたいものを守ろうとした男。




しかし、捨てきれなかったものがあり、新たに守りたいものもできてしまった。




そんな中で、男が下した判断。




抜群の読み応えでした。




こういう遣り切れない喜悲劇が、誉田作品の持ち味なんでしょうねぇ。