17冊目
「絶海ジェイル Kの悲劇'94」
古野まほろ
光文社
先の大戦中、赤化華族の疑いをかけられ、獄死したはずの祖父が生きている。
そう聞かされた「イエ先輩」こと八重洲家康は、絶海の孤島・古尊島にある監獄を訪れる。
しかしそれは、復讐に身を焦がした男の陥穽だった。
ここから脱獄してみろ。
彼と同じ方法で。
貴様が、あの天才の血胤だというのなら!
鉄壁の一望監視獄舎。
己と、己の血の名誉をかけた空前絶後の脱出劇、ここに開演。
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「群衆リドル」に続く、「イエ先輩シリーズ」第2弾です。
祖父が脱獄した絶海の監獄を、当時祖父が実行した方法で脱獄することを強いられた家康。
出来る限り当時のままにされた監獄で、当時と同じタイムテーブルで囚人と看守が動くという茶番劇の果てに到達する真実とは…という話。
いやもう、違和感のある箇所が山のように出てきて、最終的にはそれがほとんど全部伏線な上に気付いてない伏線も大量にあるという、まさに伏線まみれの物語でした。
いやー、こういうの好きだわー。面白いわー。
「こんな方法は不可能だ」なんていう意見も散見してますけど、ミステリーなんだから、モノガタリなんだから、素直に楽しむ方がいいんじゃないかと思うんですがねぇ。
というわけで、個人的には大満足だったのですが、相変わらず読み手を選ぶ作風でした。
初期作品に比べると、だいぶ読みやすくなってると思うんだけどなぁ。
あと、お気付きのかたはお気付きかもしれませんが、家康の祖父の名はやっぱり清康だったりします。
そういや前に読んだ某作品に出てきた親子は、正信と正純だったなぁ。
家康や「天帝シリーズ」の主人公たちの母校・頸草館高校もどうやら三河にあるみたいだし、この覆面作家さんはあのへん出身なんでしょうかねぇ。