9.「奇面館の殺人」綾辻行人 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

9冊目
「奇面館の殺人」
綾辻行人
講談社ノベルズ




奇面館主人・影山逸史に招かれた六人の男たち。

館に伝わる奇妙な仮面で全員が顔を隠すなか、妖しく揺らめく“もう一人の自分”の影…。

季節外れの吹雪で館が孤立したとき、“奇面の間”に転がった凄惨な死体は何を語る?

前代未聞の異様な状況下、名探偵・鹿谷門実が圧巻の推理を展開する。

名手・綾辻行人が技巧の限りを尽くして放つ「館」シリーズ、直球勝負の書き下ろし最新作。



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久々の館シリーズ最新作です。

暗黒館もびっくり館も記憶がかなり薄れているので、新鮮な気持ちで楽しく読めました。



館の主も招待客も、自室以外では全頭タイプの仮面を着用するよう義務づけられた館内で発見される首なし死体。



外は大雪のため、まさしく「吹雪の山荘」状態で、死体発見現場もまた密室。



しかも、犯人の企みにより仮面には鍵がかけられ、外すことができない。



犯人は誰なのか?
その前に、被害者はあの男で正しいのか………?



あらすじを補足するとこんな感じになるのですが、


ミステリー好きならたまんないよね、この設定!

ごはん3杯くらいいけるよね!!



もちろん私も、このシチュエーションだけでテンションが跳ね上がる人間なのですが、そりゃあもうひとりの自分がツッコミを入れてたりはするのですよ。



『安っぽいミステリークイズみたいな設定だね、コレ』と。



正直、前置きなしにこんな物語を始められたら、ちょっと興醒めだったんじゃないかと思うんです。



でも、そこはさすが綾辻さん。



用意された舞台装置に導くため、しっかりしたストーリーを構築されていたので、あまり違和感を抱かず設定に入り込むことができました。



トリックもさすがの一言。



もちろん賛否はあるだろうけど、自分の常識と照らし合わせて不可能だから、ありえないからといって、駄目ってことはないのだよ、ミステリーは。本格というものは。



あくまで、謎解きが始まるまでに(あるいはそれこそ「読者への挑戦状」を叩きつけるまでに)、論理的回答を導き出せるだけのデータが揃っていさえすれば、それはどんなぶっ飛んだトリックであっても、それだけの理由でアンフェアだと謗るべきではない!



そう私は思うんですけどねぇ。



いやいや失礼。どうにも幾つか、難癖にしか見えない感想を目にしたので、つい。



私としては、全くアンフェアだとは思えませんでしたし、充分に堪能できる内容でした。



まあ、ツイッターでトリックの一部を見てしまうという悲劇がありましたけど……、それはもう忘れましょう。





今回、あとがきで「館シリーズは全10作品だ」という言質が改めて取れましたし、また新しい「館」の出現を心待ちにしたいと思います。