72.「メルカトルかく語りき」麻耶雄嵩 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

72冊目
「メルカトルかく語りき」
麻耶雄嵩
講談社ノベルズ




ある高校で殺人事件が発生。

被害者は物理教師。

硬質ガラスで頭部を5度強打され、死因は脳挫傷だった。

現場は鍵がかかったままの密室状態の理科室で、容疑者とされた生徒はなんと20人!

銘探偵メルカトルが導き出した意外すぎる犯人とは――(答えのない絵本)


他、全5編収録。

麻耶ワールド全開の問題作。



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あらすじにあるように、問題作です。



他に表現する言葉を見つけられないほどに、問題作です。



そして、これ以上語るとネタバレになってしまう恐れがあるほどの、問題作です。



しかし、ネタバレが瑕疵にはならないかもしれない。そんな疑念すら沸いてくる、素敵な問題作です。



古今東西、色々なミステリがあって、王道があまりにも幅を利かせたために、変格やメタなんてものも生まれ、いまではミステリという分野がかなり懐の深い分野にはなっていますが、この作品は、許容できない人の割合が多そうだなぁ(笑)



世にメタミステリ数あれど、ここまで直球勝負なものも珍しい。



「どんなにありえなさそうな結論でも、他に可能性がないならそれが真実だ」なんて台詞は、それこそミステリでは使い古されすぎていて最近はあまり目にすることもありませんが、この作品にこそ相応しい言葉なのかもしれません。



ただ眼前にある、ありのままのものこそが、かけがえのないたったひとつの真実なのである。



例えそれが、どんなに邪悪で理不尽なものだとしても。






まあ私は到底そんな境地には辿り着けないけれど、面白い作品でした。



私的ベストは「収束」。

こんなオチなのに、圧倒的なカタルシス!(笑)

こんなオチなのに!!(大事なことなので2回言いました)