55冊目
「首無の如き祟るもの」
三津田信三
講談社文庫
奥多摩の山村、媛首村。
淡首様や首無の化物など、古くから怪異の伝承が色濃き地である。
三つに分かれた旧家、秘守一族。
その本家・一守家の双児の兄妹の息災を祈る十三夜参りの日から、惨劇は始まった。
戦中戦後に跨る首無し殺人の謎。
驚愕のどんでん返し。
本格ミステリとホラーの魅力が鮮やかに迫る。
「刀城言耶」シリーズ傑作長編。
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あいかわらず、舞台設定を把握するまでに時間がかかるなぁ。
まあ、それがないと面白さが半減するし、全体の長さからすれば大した割合でもないから、特に冗長だとは思わないのだけれど。
でも、前半は読むペースが上がらなかったのも事実なんだよなー。
とはいえ中盤からは、じっとりとした雰囲気と怒濤の展開にどっぷりと浸れました。
首無し死体ということで、もちろん「犯人が首を切って持ち去った理由」というのが大きな謎のひとつとなっているのですが、この理由は新しい。
この作品だからこそ成立するという部分も多分にありますが、首切り殺人のトリックとしては新機軸なのではないでしょうか。
そのへんのトリックも含め、謎解きシーンで説明されるあれやこれやは、読んでる時に違和感を感じはしたものの、そのままスルーしたものばかり。
「ああっ、そうだったのか!違和感はあったよ確かに!!」
と歯噛みしっぱなしでした。
こういうのが一番悔しいんだよなぁ…。
ひとつ難を言えば、媛首村で恐れられている「首無」というモノの怖さが、読んでてあんまり伝わって来なかったところが勿体なかったかな。
そういう恐怖が加味されれば、もっとゾクゾクしながら読めたと思うのだけれど。
そもそも、「淡首様」と「首無」の属性が近すぎて、なにを怖がればいいのかが曖昧になってしまってるのが、怖さを薄めてる要因かも。
でもなー、両方とも必要なんだよなー、最終的には。
何にせよ、かなりクオリティーの高いミステリーでした。
三津田作品としては、ホラー度はちょっと低めですけどね。