32冊目
「天帝のはしたなき果実」
古野まほろ
講談社ノベルズ
90年代初頭の『日本帝国』。
名門勁草館高校で連続する惨劇。
子爵令嬢修野まりに託された数列の暗号を解いた生徒会長・奥平が斬首死体となって発見される。
報復と謎の解明を誓う古野まほろら吹奏楽部の面々だが、その前で更なる犠牲者が。
本格と幻想とSFが奇跡のように融合した、青春ミステリーの金字塔。
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「命に三つの鐘が鳴る」を読んだことで古野まほろ熱に火が付き、デビュー作を再読してみました。
吹奏楽部顧問・瀬尾兵太の厳しい指導の元、アンサンブルコンテストに向けて瀬尾が作曲した「天帝のはしたなき果実」を猛練習する吹奏楽部選抜8名を中心として描かれた、ありていに言えば青春ミステリーです。
ただ、そんじょそこらの青春ミステリーとは訳が違います。
何より「果実」の演者8名を始めとする主要登場人物たちが、何らかのマニアばっかりで、その衒学的な言い回しの数々には目眩がするほど。
大量に使われるルビ。
明らかに読者のキャパシティを超えている蘊蓄の数々。
その蘊蓄も多種多用で、分かるらないものも多々あるのですが、そんな脱線を含めた文体がこの作品の魅力のひとつです。
そして、真相を見つけると言うよりも、他の可能性を完全に否定し尽くすことを目的としたような推理部分。
うーん、やっぱり名作だなぁ。
主人公のまほろが、私が個人的に好きな「ネガティブ主人公」なのも高ポイントです。
よし、こうなったら「天帝シリーズ」全部再読しようか。