18.「リベルタスの寓話」島田荘司 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

18冊目
「リベルタスの寓話」
島田荘司
講談社ノベルズ




中世クロアチアの自治都市ドゥブロブニク。


ここには、自由の象徴として尊ばれ救世主となった「リベルタス」と呼ばれる小さなブリキ人間がいた―――。


ボスニア・ヘルツェゴヴィナの一都市モスタルで、心臓以外の臓器をすべて他の事物に入れ替えられるという酸鼻をきわめる殺人事件が起きた。


殺されたのはセルビア人の民族主義グループの男たちだが、なぜか対立するモスリム人の男の遺体も一緒に残されていた。


民族紛争による深い爪痕と、国境を越えて侵食するオンラインゲームによる仮想通貨のリアル・マネー・トレード。


二つの闇が交錯するとき、複雑に絡み合う悲劇が起こる。




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あらすじだけだとざっくりしすぎているので、もうちょっと死体発見現場を詳しく書いておきましょうか。



死体は4つ。
すべて性器を切り取られている。

そのうち3体は首も切り落とされていて、床に転がっている。

傷口から出た大量の血液で、室内は深さ2センチほどの血の池となっている。

そして常軌を逸する装飾をほどこされているのが、もうひとつの死体。

喉のすぐ下から下腹までが縦に切り裂かれていて、肋骨を覆う肉の前面とその下の腹部全体が、左右いっぱいに開かれていた。

その開かれた肉の中にあるはずの内臓は、全く見当たらない。

その代わりに、とでも言うように、体内には取り去られた内臓と似た形状の別のものが入っている。

肺の代わりには金属製のはんごうの蓋と、虫籠のような竹細工。
肝臓の代わりには大型のフラッシュライト。
膵臓の代わりに携帯電話。
腎臓の代わりにパソコン用のマウスが左右にひとつずつ。
マウスのコードを尿路代わりにし、膀胱には白色の大型電球。
胃の代わりに透明なガラス瓶。
胆嚢の代わりには小さなランプ。
腸の代わりには丸められたホース。

そしてなぜか心臓の位置に押し込まれている円筒形の金属缶の中には、被害者の心臓が詰め込まれていた。

心臓以外の内臓と4人分の性器は、現場から持ち去られていた…。




長々とグロテスク表現申し訳ありません。



いや何が言いたいかというと、こんな仰々しい殺人現場の描写をされたら、ミステリー好きとしてはテンション上がりまくりで大変なんです、っていう話ですよ。



しかもこれが物語の冒頭も冒頭、読み始めてほんの数ページで明かされるってんだからもう、のめり込めないはずがありません。



あとはもう一気読みでした。



まあ正直結末は、理路整然としてはいるもののえらく小さくまとまったな、なんて思わなくもなかったですが、十二分に楽しませていただきました。



御手洗の出番が少ないのが少々残念ではありましたが。



あと、同じく旧ユーゴの内戦が物語に深くかかわる「クロアチア人の手」という作品も収録されているのですが、うーん、これはある意味バカミスギリギリラインな印象ですね。



実現可能か不可能か、とかいう議論の前に、全体的に粗い感じがしました。



石岡君が奮闘する話なので、石岡萌えな方々にはお気に召す、の、かな?