13~15.「秀吉の枷」加藤廣 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

13~15冊目
「秀吉の枷」(上中下巻)
加藤廣
文春文庫




「殿は、いつまでもあの『覇王』の手先であってはなりませぬ」

死を目前にした軍師・竹中半兵衛は、病床で秀吉に四つの忠言と秘策を授けた。

秘策――それは密かに毛利と手を組み、羽柴勢の後詰めとしてやってくる信長を挟撃する策だった。

しかし信長は京・本能寺で明智勢の襲撃に遭い消息不明となる。

自ら手を下すまでもなく訪れた好機に、天下取りへの野心をふくらませる秀吉。

しかしそれは、生涯引きずることになる枷を自らはめた瞬間でもあった…。




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前作「信長の棺」のその後の話です。



大田牛一視点の前作と違い、秀吉視点で描かれている今作では、やっぱり信長の描写が全然違いますね。



けれどどちらも、人口に膾炙している信長観から大きくズレていないので、特に違和感を抱くことなく読むことができました。



歴史上に人物は数あれど、織田信長ほど評価の「振れ幅」がある人物ってなかなかいないな、と改めて実感。



個人的には好きなんだけどなあ、信長。
功罪でいえば功の方が圧倒的に多いし。



まあ信長観の話で引っ張ってもしかたがないのでこのくらいにして、内容の話に戻します。



とはいえ、冒頭部分の話をするとどうしても「信長の棺」のネタバレに繋がってしまうので、中盤以降の話をオブラートに包んで話しましょうか。



この物語では、竹中半兵衛が死ぬ直前から秀吉の死までが、ほとんど史実通りに語られています。



秀吉の全盛期といえば関白就任あたりで、その後は秀次を切腹させたり、ろくに計画も立てずに明攻めを敢行したりと老醜を晒したイメージが強いと思います。



しかし、その老醜とも言える晩年へと至ることが秀吉の人生にとって必然だったとしたら、秀吉の人生に影を落とした一体なんなのか。



そういうことを考えながら読むと、より物語を楽しむことが出来ると思います。



こりゃあ三部作最後の「明智左馬助の恋」も読まないとなぁ。