11冊目
「群衆リドル Yの悲劇'93」
古野まほろ
光文社
浪人中の「元女子高生」渡辺夕佳のもとにとどいた『夢路邸』内覧パーティーの誘い。
恋人の東京帝大生・イエ先輩こと八重洲家康と連れだって訪れたそこには、個性的でいわくありげな招待客たちが集っていた。
雪の山荘
謎めいた招待状
クローズドサークル
犯行予告
ダイイング・メッセイジ
密室
生首
鬼面
あやつり
マザー・グウス
そしてもちろん、名探偵。
本格ミステリのあらゆるガジェットを駆使したおそるべき傑作。
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待ちに待った一年ぶりの新作です。
しかも初めて講談社以外での出版。
その期待を裏切らない作品でした。
雪の山荘で、怪しい招待状により集められた人々が、突然現れた鬼面の人物に「罪」を告発される。
下界への道は塞がれて、ひとりまたひとりと死んでいく招待客たち。
ひとりいなくなるにつれて、人数分あった広間の人形も減っていく。
という、アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」を彷彿とする展開でミステリー好きとしてはテンションが高まります。
その上、死体のそばに残されているのは、「Y」と読めるダイイング・メッセージらしきもの。
いいですねー。
昨今、これだけガジェットもりもりなミステリーを書いてくれる人はあまりいないので、その雰囲気にどっぷり浸りながら読み進めることができました。
「天帝シリーズ」とのリンクも嬉しいサービスでしたね。
ただまあ、初の講談社ノベルズ以外での出版ということで、いつもの衒学趣味はかなり控え目。
いつもと違うお客様だったから、ちょっと枝葉部分は少なくしたのかな?
あと、それとも関連してくるのかもしれないけれど、もうちょっと展開がゆっくりでもよかったかな、とは思いました。
これだけの人死にがあるんだから、倍くらいの厚さにしてもっとじっくり読みたかった。
それもまあ、枚数制限とかあったのかもしれないし、しょうがないところなんだろうけど。
次に出るのは「天帝シリーズ」の新刊かな。
鈍器になるほど分厚いの、期待してます。