87.「マドンナ・ヴェルデ」海堂尊 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

87冊目
「マドンナ・ヴェルデ」
海堂尊






注:「ジーン・ワルツ」(海堂尊)を読んでいないかた、特に今後読もうと思っているかた、は読まない方がいいと思います。






平凡な主婦みどりは、一人娘で産科医の曾根崎理恵から驚くべき話を告げられる。

子宮を失う理恵のため、代理母として子どもを宿してほしいというのだ。

五十歳代後半、三十三年ぶりの妊娠。お腹にいるのは、実の孫。

奇妙な状況を受け入れたみどりの胸に、やがて疑念が芽生えはじめる。




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前作「ジーン・ワルツ」は娘の理恵視点で描かれていましたが、今作は同じ時系列の話が母のみどり視点で描かれています。



起こることが分かっているから読んでいてびっくりすることはあんまりないのですが、そのぶん理恵の冷たさが際立ちますね。



「ジーン・ワルツ」は表で、この「マドンナ・ヴェルデ」が裏、なんてよく例えられています。



でも、表裏の二面だけではまだ不足なんじゃないだろうか、と思ったのも事実です。



「ジーン・ワルツ」の理恵は、産婦人科医としての顔しか見せていませんでした。



かたや、「マドンナ・ヴェルデ」では、理恵の妻として娘としての一面が確かに出ていたとは思います。



思うんですが、それは、「医師・曾根崎理恵」という前提の上での、妻であり娘の部分なんじゃないかなぁ、と思ってみたり。



医師としての職責とか矜持とかを背負っていない、人間としての理恵の姿は、この表裏の物語ではフォローしきれていないように感じられました。



ひょっとしたらこの物語には第三幕があるのかも。そう愚想してしまいました。



それがなかったとしても、別の作品でこれからの理恵の様子が見られれば嬉しいですね。



そういえば「ジーン・ワルツ」が映画化されるとか。
何処に主眼を置くのかが気になります。



結局ユミがおいしいところを持っていきそうな予感(笑)