54.「ダウスに堕ちた星と嘘」高里椎奈 | 町に出ず、書を読もう。

町に出ず、書を読もう。

物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

54冊目
「ダウスに堕ちた星と嘘 薬屋探偵怪奇譚」
高里椎奈




『枕石公園の怪異を調べてください』
妖怪雑事相談所「深山木薬店改」の玄関扉に挟まれていた手紙には、短くそれだけが書かれていた。



『深山木秋様』宛名にはそう書かれていたが、差出人の名はなし。



先代店長であり現在は雇われ薬剤師の秋は、現店長のリベザルに依頼を丸投げする。



実地調査をしたリベザルは、落とし穴らしき穴に片足の膝から下が埋まった酔っぱらいが保護される、という事故があったことを知る。



何ということも無いような事故だが、リベザルには心当たりがあった。そしてリベザルは、依頼人である秋に依頼の放棄を申し出る。



一方、枕石公園では同様の事故が続き、回を重ねるたびに被害者の負傷が酷くなっていた。



一連の事故に不信感を抱いた警察は調査を開始し、秋も何やら影で動いている模様。



騒々しくなる周囲の動きに、リベザルは否応もなく過去の過ちと向き合うことになる・・・




・・・・・・・・・・・・・・・




新シリーズとなって三作目です。



今回のはいつもにも増して心に残るいい話でした。



その中でも象徴的に何度も登場するのが、「需要と供給」という言葉です。



中身を説明すると若干ネタバレにもなりかねないので控えますが、深い話でした。



しかも、最初のほうで秋が「需要と供給」と口に出した時に、意味の分からなかったリベザルが「じようときょうそう?」などと聞き返すシーンがあるんですが、まさか後々こんなに効果的な言葉になるとは、とその構成にも感服しました。



まだまだ店長としては頼りないリベザルですが、ちょっとずつ成長しているのがいいですね。



今作で抱えていた大きな案件をひとつ解決したリベザルの、次回作での姿を見るのが楽しみです。