29冊目
「百物語 浪人左門あやかし指南」
輪渡颯介
藩の剣術師範選考試験に向けて、江戸に赴いた刈谷甚十郎は、兄弟子の辻村鉄之助に『自分の代わりとして、百物語を肴にする酒宴に参加してほしい』と頼まれる。
剣術は滅法強いが怪談に滅法弱い甚十郎は強硬に断るのだが、他に適任がいない、と鉄之助も折れない。
過去に因縁がある男との命をかけた果たし合いを控えているため、百物語などに参加している余裕はないのだという。
しかも、その百物語自体が何やらキナ臭いと感じているらしく、腕の立つものに行ってもらいたいのだ、と鉄之助は続ける。
酒と怪談そして何より腕が立つとなれば、自分などより師範の平松左門が適任ではないか、と甚十郎は訴えるのだが、鉄之助が言うにはもう断られたらしい。しかも左門が甚十郎を指名したのだという。
酒と怪談を何より愛する左門が、このような格好の催しを断ったということに不信感を抱く鉄之助は、尚更甚十郎に行って欲しいのだ、と頼み込む。
師範の推薦と兄弟子からの頼みを断り切れるわけもなく、甚十郎は渋々会場へと向かうのだが…
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「浪人左門」シリーズ第二弾。
前作みたく、事件と怪奇現象が別々に並列的に語られていて、怪奇現象に説明がついた途端に芋づる式に事件も解決する、という話ではなかったのでそこはちょっと残念。
二作目にしてパターンに填まるのは宜しくないだろうし、そこは仕方無いか。
でも怪談と事件の融合という意味では前作より落ちる印象になってしまった。
とはいえ、百物語の顛末を始め、甚十郎が修行をしている道場の主・庄兵衛と左門の出会い、鉄之助の果たし合い、左門の住む長屋の老人の話など全ての要素が混じりあっていくのは壮観でした。
次作はどんな感じになるのか楽しみです。
追記
次作の「無縁塚」をネット注文しようとしたら、この「百物語」と倍近く値段が違ってる。
え?いきなりハードカバーになったのかしらん??