88冊目
「カンニング少女」
黒田研二
姉の事故死に不審さを感じていた高校三年生の天童玲美は、姉の手帳にあるメモから姉が通っていた馳田学院大学の関係者が、何らかの事情を知っているのではないかと疑う。
何とか関係者に話を聞きたいが、馳田学院はセキュリティが厳しく、こっそり侵入することもできない。
学外で接触するとすれば姉の名を出して身分を明かさなければならず、もし姉の死に関わりがあるとすれば正直に答えてくれるとは考えにくい。
そう考えると、馳田に入学して地道に調査をしたほうが真相に迫りやすいのではないか、と玲美は考える。
しかし、馳田は私立の名門校。今の玲美の学力では到底合格することはできない。
そこで玲美の考えた手段はカンニング。
東大合格確実と言われる学力の持ち主愛香。
機械いじりが得意な隼人。
足で大学推薦を勝ちとったほどの俊足で度胸も満点の杜夫。
三人の協力を得て、馳田学院合格へ向けて策を練る。
しかし不測の事態が頻発。はたして玲美は馳田学院に合格することができるのか。
そして姉の死の真相とは・・・
…………………………
痛快ですなぁ。
そして淡い。
文庫版の帯に「胸キュンコンゲーム」なんて若干買うのに躊躇いをしていまいそうな文言が書いてあったけど、なかなか言い得てる内容でした。
文庫版解説で大矢博子さんも書いてることなんですが、この物語内でのカンニングは実現可能なものばかり。そんなもの本として出したらマズイんじゃないか真似する人がいるんじゃないか、というとそうでもなく協力者が必ず必要だという弱点もあります。
万が一露見すれば内申点なんか最悪評価だろうし、推薦が決まってる杜夫にしたって入学が取り消されることもありえます。
それでも協力するというのが、言ってしまえばある意味物語的ではあるのかもしれませんが、三人は玲美の話を聞き、自分たちのリスクも覚悟の上で手を貸します。
なんかねぇ。
いいじゃないですか、青春。
童心に帰る、とはちょっと違うけど、虚心になるというか。
しかもまた玲美が健気でねぇ。
合格ラインは絶対に越えなければならないのでカンニングをするのはするんですが、出来るだけそれに頼らなくてもいいように普通に受験勉強とかしてるわけで。
そして馳田学院最後の科目。完全なるカンニング対策を施した教室と試験問題。あー、そうもってきたか。というか予測はついてたけどそうか、そういう試験問題か。
どっちかというと黒めの話の方が好きなワタクシですが、これだけストレートに青春っぷりを見せつけられたらもう感服です。
そうゆうのが好きな方にはオススメですね。