81.「そして名探偵は生まれた」歌野晶午 | 町に出ず、書を読もう。

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物語がないと生きていけない。社会生活不適合者街道まっしぐら人間の自己満足読書日記です。

81冊目
「そして名探偵は生まれた」
歌野晶午




「そして名探偵は生まれた」
「生存者、一名」
「館という名の楽園で」
「夏の雪、冬のサンバ」


という四作品収録の短編集です。



「生存者、一名」が一番好みでしたね。



「生存者、一名」

教祖の命で爆弾テロを起こした男女四人の信者は、国外逃亡の準備が整うまでという名目で鹿児島沖の無人島に連れられて来た。



先導役の教団幹部とその部下を含めた六人は食料などを運び込み生活の準備を始めるのだが、幹部が船もろとも消えてしまう。



見捨てられたと思った幹部の部下は、彼ら四人が島に連れられた本当の理由を明かす。



テロと教団の関係が疑われた時は、彼らを切り捨て、教団や幹部達とは無関係な過激派集団だと声明を出す計画なのだという。



全幅の信頼を寄せていた教祖の裏切りに愕然とする四人。



そんな中、彼らは一人また一人と殺されていく。



このような状態で、どんな理由で殺人を犯すのか。



物語の最初に載せられている、「生存者一名が保護された」という新聞記事。



冒頭にある、爆弾テロや無人島での連続殺人について、最後の生き残りである自分が法廷で真実を語りたい、と本人が殺人犯であることを否定するような手記。



最後の一人は犯人ではないのか。

そうではないのなら、一体誰が犯人なのか…。




…………………………



若干凝りすぎな感じもしますが、発想の勝利といった感じなんでしょうかね。



歌野さんの短編はそういうの多いので、さもありなん、とか思ってしまうのが、読み手として擦れちまってるのかなぁ、と反省しないでもないです。



一番よかった、とか言ってるくせに文句ばっかりですが。






「館という名の楽園で」は既読だったせいでちょっと印象が薄かったですが、もし未読だったら一番だったかも。



ミステリ好きとして、いわくありげな洋館に住んで、本格的な犯人当てゲームをやりたいというのはとてもよく分かります。



学生時分、ミステリーツアーとか憧れたもんなぁ…。