68冊目
「探偵小説のためのインヴェンション 金剋木」
古野まほろ
水里あかね・北野夕子・深沢楓の三人は、学校の先輩・諾子から日帰りのドライブに誘われる。
偶然同じ日・同じ方向に用があったあかねたちのクラスメイト・小諸るいかも、外田警部の車に同乗し、二台で目的地に向かうことに。
山道にさしかかったところで突然狼の群れが車を襲う。
崖から転落し、車は大破。るいかの力で皆の身体は無事だったものの、あかねら数名は気を失っており、近くにあった廃校校舎で一夜を明かすことになった。
その廃校校舎には老婆と五人の少年少女が住んでいたのだが、実は彼女らは全員吸血鬼。
その地の権力者の庇護により、この建物でのみ生きることを許されている彼女らは、面倒を避けたいがため、翌朝には退去してほしいと求める。
しかしその夜、吸血鬼のひとりが『吸血鬼を殺す唯一の手段』によって殺されてしまう。
しかも殺害場所は吸血鬼は絶対に入ることができない『吸血鬼密室』となった部屋だった。
人間は殺す手段を知らない。
吸血鬼は入室することができない。
それならば犯人は?…
…………………………
探偵小説シリーズ第四作目です。
あらすじの補足をしておくと、小諸るいかは、宮内省陰陽庁長官で、勅任警察員警視監。ようするに陰陽師であり、帝から直々に任命された警察員なので、異能を持っているし(そもそも人間ですらないんですが)、警部ごときアゴで使える身分なのです。
相変わらず、ガチガチのロジカル。解答を見せることよりも、他の可能性を全て潰すことに力を注ぐこの遣り口には毎度感心します。
『吸血鬼密室』を含む、『存在としての吸血鬼のルール』という縛りの中での本格ミステリですので、アンフェアなことは何ひとつ無いですし。
ただ、そのイレギュラーな設定のせいか、これまで三作恒例だった、かるた・妄想・怨霊の三要素がなかったために、ちょっと満足感は薄かったような気がしたのが残念といえば残念でした。
ま、好みの問題なんでしょうが。
とまれ、これで次回作の「火剋金」で相剋がひと回りしてしまう訳ですが、果たして最終回になってしまうのか。
それとも、相生に切り替わって続いていくのか。
そのへんも楽しみです。