49.「UFO大通り」
島田荘司
「UFO大通り」と「傘を折る女」の二編が入った中編集。
「UFO大通り」
若い男が自宅で死亡していた。
婚約者が鍵をこじ開けて入った部屋は完全な密室。しかも男はフルフェイスのヘルメットや手袋などを身に着けて、その上から白いシーツを巻き付けて布団の上に横たわっていた。
しかも天井からは無数のガムテープがぶら下げられていた。
外傷は見当たらず、死因は不明。
更には、死亡した男には傷害の容疑がかけられていて、また男は「宇宙人が地球を侵略しようとしていて、手始めに日本が標的にされている」と主張する団体にも入っていた。
犯人も死因も動機もわからない状態で時だけが過ぎていく中、死体発見現場近くに住む老婦人から新たな証言が得られる。
「家の前の道にはよくUFOが通る」
「数日前の夜明け前に、近くの山で宇宙人たちが戦争をしていた」
その突飛すぎる証言に無論警察は耳を貸すことはなく、とはいえ捜査も進まずじまい。
そんな中、捜査に動き始めた御手洗潔の前に第二の死体が…。
「傘を折る女」
まだ朝晩に寒さの残る五月の出来事。きっかけは、石岡の聴いていたラジオ番組だった。
その日の番組は、変わった出来事を教えてください、というテーマで、電話出演したリスナーの体験した奇妙な話が語られる。
ベランダから外を見ていたリスナーは、大雨の中、道路に自分のさしていた赤い傘を置き、車に轢かせようとしている白いワンピースの女性を見つけた。
傘に気付き、車が傘を避けていくと見るや、傘を黒いポリ袋に入れて目立たないようにし、ようやく傘を轢かせることに成功。
傘は中心から見事に曲がっており、どう考えても開かなさそうな状態となったが、女性はその傘を持って去っていった。
もちろんその間も雨は強く降り続けており、女性はずぶ濡れ。それどころかリスナーの見たところによると、傘を轢かせる前、つまり傘をさしている時から、ずぶ濡れだったように見えた、とのこと。
「退屈だと」嘆く御手洗に石岡はこの謎の女性のことを話した。何故このような奇妙な行動をしたのか推理できないか、と。
御手洗が様々な要因から導き出した推論とは…。
流石の面白さ。
島田作品といえば、理解不能な目撃証言から現実的な解決へと至るカタルシスが魅力なので、ある意味冗長であればあるほど面白いのですが、短くてもいけるのだな、と再確認。
ただ、ネタバレになるので多くは語りませんが、この二編を一冊にまとめる勇気はすごいなぁ。
だからこそ一冊にまとめたのかもしれないけど。
やっぱ御手洗シリーズだけでも読み漏らしてるのを潰さないとなー、と決意をあらたにしました。