26冊目
「白昼蟲<ハーフリース保育園>推理日誌」
黒田研二
次郎丸諒が偶然覗いた望遠鏡で目撃したのは、知人の住むボロアパートでカーテン越しにもみ合う二人の男のシルエットだった。
片方の男がナイフのようなものを持っていたこともあり、次郎丸は知人に電話した上に自らも現場に駆けつける。
明かりのついていた窓とついていなかった窓の位置からどの部屋で事件が起こっているのかをしっかり確認したはずだったのだが、現場であるはずの部屋に争った形跡はなく、翌朝死体は近くの教会で発見される。
死体はアパートから運ばれてきたのか、それとも望遠鏡越しに見たもの自体が見間違えだったのか。
さらにその死体が、中学時代、悪ガキグループから陰湿ないじめを共に受けていた「ノロリ」というあだ名で呼ばれていたクラスメイトの弟だったことがわかり、次郎丸は過去の忌まわしき思い出と対面することになる…。
黒田さんといえば、「パズラー」という分類のミステリーを書くイメージがあるのですが、今作もばりばりのパズラー。
アパートの明かりがついてる窓がこことこことここだから、事件があったのはこの部屋のはずだ!とかは、ベタすぎて絶対狙ってるわ(笑)
でもそれだけでは終わらない。
子供の頃に酷いいじめにあい、数年前誤って母を死なせてしまい自殺直前にまで自分を追い込んだという経験をもつ次郎丸。
ボロアパートに住んでいるという謎の「ボス」や不良の同級生にいじめられている少年を昔の自分と重ね、何とか助けようとするが、過去の心の傷にさいなまれ苦悩する。
そんな濃厚なドラマを兼ね備えた良質のミステリーです。
ただ、読んでると精神的につらい…。