私が通知を受け取ったころ、有本という男にも大きな変化があった。

 

有本は今年で36歳になる食品系の企業で総務課に勤めるサラリーマンだ。

彼の生きがいは家族。

事務の坂田という女性と縁があり、結婚をして、幸せに暮らしていた。

去年、娘が無事に生まれ、5年前に生まれた息子に妹ができた。

携帯には、子どもたちの写真が表示されるように設定してある。仕事に疲れたときは、いつもこの写真を見て癒されている。

仕事で遅くなってしまうことがあるが、妻は子どもが生まれてから仕事を辞めたので、家のことはすべてやってくれていた。いつも助けられていると度々考えさせられては、感謝をしていた。

 

有本は学生のころから、人気があり、社内でもクールと評判で、女子社員から好意をいだかれることも多かった。妻はそんな彼のことを心配する一方で、どこか誇らしかった。

家族を守るため、有本は懸命に働いた。辛いと感じたことは一度もなかった。

 

有本の会社では週に2日は休みが与えられる。有本は休みの日を家族サービスに費やした。

車でデパートに娘と息子を連れ、出かけるのがいつものパターンだ。

娘のおむつや息子の小さな靴。晩ご飯の買い物もする。

妻には日ごろの苦労をねぎらってもらうため、家で休んでもらうようにしていた。

 

いつものようにデパートに買い物に行き、娘のおむつを買い足すために、ドラッグストアに向かった。

いつもの定番のおむつを選ぶ。レジの人も顔見知りになり、軽くあいさつを交わすようになった。

息子はデパートにくると必ずUFOキャッチャーをやりたがる。家でYoutubeをよくみている影響なのかもしれない。すこし恐ろしい感じがするのは、時代の波についていけていないからなのだろうか。

ドラッグストアからゲームコーナーに向かう途中、息子が小さな足をフル回転させ、全力疾走で駆け出した。

ゲームコーナーの手前には休憩スペースがあり、そのスペースは、宣伝スペースにもなっていて、よくティッシュ配りのお姉さんが笑顔でティッシュを配っている。先週は携帯の乗り換えの案内を宣伝していた。

今日も、そのスペースには例のごとくお姉さんがティッシュを配っていた。

息子がお姉さんの方にどんどん向かっていく。お姉さんは息子の視線に合わせるように屈んでティッシュを渡しているのが見えた。

いつもと違ったのは、そのお姉さんがティッシュを渡してすぐにその場を去ったことだ。

よく見ると宣伝スペースには何も書かれていない。

見たこともないぬいぐるみや聞いたこともないメーカーの洗剤が置いてあり、お姉さん以外には人はいないみたいだった。

息子はティッシュを受け取ると、はしゃぎながら好きなアニメのキャラクターのUFOキャッチャーめがけて走り出した。

私もUFOキャッチャーにたどり着くと、息子に100円玉を渡して、ゲームをするように促した。

そして、先ほどのお姉さんが気になった私は後ろを振り返り、ゲームコーナーの外の宣伝スペースの方を見てみた。

すると、先ほどまで置いてあったぬいぐるみや洗剤すらが消えていた。お姉さんもいなかった。

息子がティッシュを握りしめながら、100円をせがんでいる。100円を渡すのと交換で、ティッシュを受け取ると、そこには「シャッフル・テスト」と書かれていた。

そのティッシュの右下には小さく住所が記されていた。

 

家族が生きがいだった有本。

有本もまた、ここから人生を考え直すことになってしまうのだ。