「起きてアイマスクを外せ!180番!」
突然発せられた大きな機械音声で私は目を覚ました。
何だろう、妙にまぶしい空間だ。
部屋の明るさに目が追い付かない。私は、とっさに下を向いて、まぶしさから逃れようとした。
下を向いたときに見えた床は真っ白で、部屋の明かりをより強調させていた。
ここはいったいどこだろう。何かをしていたはずなのだが、思い出せない。
なんだか頭も重い感じがする。
思い出せることは、そう、私は確か、子どもたちとデパートに行き、妻に頼まれた買い物を済ませようとしていたはずだ。
そして、買い物を終え、家に帰り、妻の作ってくれたカレーを食べて、それから…。うーん、このあたりから記憶があいまいだ。ひどい眠気を感じたような気がする。
何があったのかを思い出そうとしているうちに、目がだんだんとなれてきて、周りの風景がわかるようになってきた。
ここはどこかの施設だろうか。広々としたホールのような空間。ここは何かの部屋なのか。この部屋を囲む真っ白な壁が私に妙な圧迫感を与えた。
このホールのような空間を探っていると、私のほかにも人が倒れているのが見えた。
私はその人物に近寄り、声をかけた。今の自分がおかれている状況がまったく理解できない以上、今はどのような情報でもいい、なにかヒントになるようなことが得られればという一心だった。
「なあ、あんた、おい、起きてくれないか。なあ」
何度か、その人物を揺すってみた。だが、目を覚ますような素振りは全く見られない。あきらめきれなかった私は、その後何度か声をかけたが、結局起きることはなかった。
見たところ死んでいる様子でもないので、いったんその人物を放置し、ほかに手掛かりになるようなものはないか、改めて探し始めた。
一面真っ白な床の部屋。そして、真っ白な壁。倒れている謎の人物。
ほかにも何かないかしばらく歩いてみたが、この部屋にはこの要素以外に調べられるものは一切ないように思えた。
しかし、よくみると遠くの床の一部分が盛り上がっているようにみえる部分があることに気づいた。
その盛り上がっている部分を確認するべく、ゆっくりと近づく。
近づいて見てみると、盛り上がっていると見えていた部分には、何やら取っ手のようなものがついていることがわかった。
私は、取っ手にゆっくりと手をかけた。
慎重に引き上げる。
しかし、取っ手の部分は少し引き上げたぐらいでは、びくともしなかった。
ほかに調べるものが何もなく、この取っ手が最後の希望だと考えていた私は、力いっぱいその取っ手を引き上げた。
すると、潜水艦のハッチが開くように、床の一部が開き、中から、若い男が2人現れた。
「いやあ、助かりました。行き止まりでどうしようか考えていたところだったんです」
優しそうな青年が徐に言葉を発した。もう一人の若い男は私を一度見た後、こちらに目を合わそうとはしなかった。
ふと、彼らが出てきた床が開いて現れた穴をみると、その穴はどこまで続いているのかまったく見当がつかないほど下までつづく梯子がつづいていた。